生活を豊かにする「器と道具」伝統工芸とモダンに暮らす 第2回(全6回) 家にいる時間が長い昨今、日々手にし、使うものこそ本当に気に入ったものを揃えたい、そして長く、愛着を持って、不具合が出たら修理しながら使いたいという人が増えています。本特集では生活を豊かにする日本の伝統工芸、手仕事の品を「盆と膳」「籠」「コーヒーとお茶の道具」の3つのテーマでご紹介。
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手仕事から生まれた器や道具には、作り手の思いが込められているが、それを生かすのは使い手次第。
端正な仕事の佃 眞吾 作の「神代欅木瓜盤」「欅木瓜盤」を中心にしたテーブルには、吉田佳道 作のモダンな「六ツ目籠」にバゲットを花のように入れ、久保一幸 作の横長の「フランスパン籠」には花を入れて初夏の風を誘う。
盆の上のガラス小皿、六角小皿、箸置き、マルチガラスカップ/暮らしのうつわ 花田 漆箸、ワイングラス/サボア・ヴィーブル 石粉塗コップ・皿/さぬきうるし Sinra ガラスカップを置いた錫黒塗分花形台は松﨑 修 作/工藝器と道具 SML ワインボトル、グリーンなどの籠/暮らしのクラフトゆずりは日々を豊かにする日本の工芸「盆と膳」
──朝昼晩、和にも洋にもお洒落に使いこなす食器のような華やかさはなく、ひっそりと地味な盆や膳ですが、料理や器を並べると印象ががらりと一変。見た目にもまとまり統一感ある食卓に変貌します。こぼしても気にならず、ほかの部屋に持ち運ぶのも楽。今、新鮮なのは、使い方を楽しめる盆や膳です。
ティータイムに、お酒の時間に
キッチンから料理や食器を運んだり、お客さまにお茶を出したりするのに必要な盆。膳は料理をのせて出す台のことで、折敷と呼ぶ場合は、もっぱら茶懐石などで使われる格式高いものを指します。角形で角のないものを隅すみ切きり、角のあるものを隅不切(すみきらず)、また四隅に切り込みを入れた形は木瓜(もっこう)と呼びます。
一口に盆といってもいろいろですが、ちょっとあらたまった食事の折敷や膳も、広くは盆の仲間ですから、家庭では盆と膳の垣根を取り払って自由に使うことがおすすめです。
朝晩の食事に盆や膳を使い始めるとその便利さに気づきます。テーブルに持ち運んで、器と料理を並べると、見た目にもすっきりとまとまります。盆が、絵画の額縁のような効果をもたらすからでしょう。
器や料理のような主役ではないけれど、陰の立役者なのです。その上食事が終われば、そのまま流しへ運ぶことができますし、ほかの部屋へ移動するのも楽。とても重宝します。
暮らしの中に盆が一つあるだけで豊かな印象に変わるはず。日本人は木の道具とともに生きてきた──美しい色つやの盆を見ていると、そんなことにも思いが巡ります。