日々の暮らしを豊かにする“衣食住”の品 涼やかな夏の生活道具 第4回(全6回) 家で過ごす時間が多くなりそうなこの夏は、日々の生活道具を今一度見直すいい機会かもしれません。この特集で取り上げるのはガラス器と染織品。夏の暮らしを涼やかに演出してくれる日本の手仕事の逸品を、使い方の提案とあわせてご紹介します。
前回の記事はこちら>> 暮らしのさまざまなシーンで使いたい、透け感を楽しむ夏の“染と織”私たちが涼やかさを感じる夏の布は、「透ける」もの。ふんわり「揺れる」風の気配も、やはり涼感につながります。こざっぱり、さらさらと肌に「心地よい」布の風合いは、最も求められることでしょう。ストールやインテリア空間で、夏ならではの布あしらいをさまざまに楽しんでみませんか。
真木千秋さんの布仕事
夏にひんやり涼しい布といえば、江戸時代に考案された麻織物、小千谷縮が浮かびます。細かい波状のしぼをもつさらりとした感触の布です。
真木テキスタイルスタジオのストールは主に絹を使いますが、「シルクも夏のきものに使われました」と真木千秋さん。昔から練っていない生糸で織った布は「すずし」と呼ばれ、「張りがあって薄くて軽くて麻ほどに涼しい」といいます。
真木さんの布仕事は、練らずに使うインドの野蚕の糸、タッサーを多く用います。黄繭や家蚕の糸、座繰り糸、ずり出し糸など太さも撚りもさまざまな糸で織り上げた布は、さながらシルク版しぼともいえる表情豊かな風合い。ヒマラヤの麓の工房で、土地の天然素材を用いて、インドの手織り職人が織り上げます。
「ストールは、手で押し洗いをしてくださいね。自然の風合いが戻り健康的な美しさになって気持ちいいと思いますから」。
徳島で藍染め一筋に活動。森 くみ子さん
森 くみ子さんは、藍草の産地、徳島で藍染め一筋に活動。
阿波の藍を研究する傍ら、古来の木灰醱酵建(あくはっこうだ)ての染めを手がけています。その布には澄み切った深い藍の色が冴え冴えと息づき潤いがあります。
綿を紡ぎ、草木染めをして織る中本扶佐子さん
「綿の素朴さが好きで」という中本扶佐子さんは、山陰で手紡ぎを勉強。海島綿やインド綿、ペルー綿などを紡ぎ、草木染めをして織ります。
どのストールも爽やかでデリケートな透け感です。
盛夏の冷房対策には小ぶりのストールを「藍ビーズショール」中本扶佐子 作3万7400円デザイナーの前﨑成一さんから「定規のようなデザインをしてみたら」と提案されて生まれた。経糸は藍染め、緯糸はロッグウッドで絣になっている。アンティークビーズを房につけて。
詳しく見る>>夏の籠にもストールを上手にあしらってはいかが右・「山ぐるみと染め皮籐の籠」7万7000円、「ストールおりかえし織り」3万5200円、左・「山ぐるみと皮籐の籠」7万4800円、「ストール霞空羽ムガ グラデーション」4万1800円空羽(あきは)は、経糸に隙間を作って透け感を強調した織り方。籠は真木雅子 作、布は真木テキスタイルスタジオ。
詳しく見る>>真木千秋さん、森 くみ子さん、中本扶佐子さんのストール
糸も染めも天然素材を用いたストールには自然の優しさがある。
フォトギャラリーで詳しく見る 〔特集〕日々の暮らしを豊かにする“衣食住”の品 涼やかな夏の生活道具
撮影/阿部 浩 スタイリング/横瀬多美保 フードスタイリング/梶井明美 取材・文/片柳草生 手作りの品のため、サイズや色、形、仕上がりなどが写真や説明と異なる場合があります。ご了承ください。
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。