使って眺めて暮らし華やぐ、麗しき「花の洋食器」
上から・「スイカズラ」カップ&ソーサー7万1500円/マイセン(ジーケージャパンエージェンシー) 〈ミュゲ〉ティーカップ&ソーサー5万600円/ロールセリニャック(アクセル ジャパン) 「ロイヤルウースター」の1875年製カップ&ソーサー5万円 レースドイリー/ともに虎徹 クロス/アクセル ジャパン細密かつ流麗な筆致で描かれるのは、息をのむほど美しい自然の息吹。17世紀のヨーロッパでは花の代わりに、花の器に想いを託し贈ったといいます。
以来変わらぬ優美さを持つ「花の洋食器」と今の暮らしに即した使い方、楽しみ方をご紹介します。
日本における花の絵付けの第一人者、石井逸郎さんに聞く「花の洋食器」の魅力
デンマーク・コペンハーゲンにて、テーブルコーディネートに魅せられ、器のペインターの世界に飛び込んだ、石井逸郎(としろ う)さん。自ら花の洋食器を手がける石井さんにその魅力から選び方までを伺いました。
石井逸郎さん(いしい としろう)1972年デンマークに渡り、78年「ロイヤルコペンハーゲン」入社。88年に独立。90年日本にて絵付けデザインスクール「SCANTIPS(スカンティップス)」、工房「CRESTIPS(クレスティップス)」を設立。http://crestips.juno.weblife.me18世紀、ヨーロッパ貴族の間では、花束を贈る代わりに花の器を贈ることが流行したと伝わります。
花の器はその後も絶えず、食卓を彩り続けてきました。「いつの時代も花は暮らしに欠かせません。生の花がない季節でも花が描かれた器が食卓にあるだけで、心が豊かになります」と石井さん。
作品は流麗な筆致と透明感のある色彩が特長。「季節はもちろん、描く花が咲いている場所の光や空気感までも表現したいと考えています。またその器が使われる空間に合うかどうかも大切ですね」。制作の信条は、どこか私たちの器選びの考え方にも通じるところがありそうです。
「洋服を選ぶように、ご自身に似合うものを選ぶとよいと思います。同じ柄でも手描きの微妙な違いでどれにしようか迷ったら、野菜売り場で“こっちのほうが新鮮そう”と感じるのと同じ感覚で決めるとよいですね。そうして選んだ器を日常的に使ううち、よりよい物を選ぶ目やセンスが養われていくはずです」
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「KPMベルリン」〈ノイグラート〉のプレートにラッパ水仙を描いた作品。下で紹介する器も含め、中央の花だけでなく、金彩模様のアクセントとして葉っぱや小さな蕾が描き加えられている。下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/横瀬多美保 取材・文/安藤菜穂子 ※記載以外のものは私物です。文中ではアンティークギャラリー 虎徹は虎徹と表記しています。
『家庭画報』2022年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。