花束のような彩りで、花摘みの庭は混ぜ植えスタイル
新谷さんがファームガーデン内から摘んできたばかりの花を自ら生けたコーナー。野の花のようにワイルドでありながら、洗練された美しさも併せ持つ。自然の複雑な生態系に倣って、なるべく少量多品種の花々を混植するのが十勝千年の森スタイル。
苗を植えつけるときから、それぞれの花の色や形、高さなどのバランスを計算しておくことで、育つ間も日々美しい風景が楽しめ、生長後は摘み取ってそのまま組み合わせれば、彩り豊かなブーケになります。
最良の組み合わせで健やかに育て!切り花養成所
「十勝千年の森」の一角にあるのが、野菜や花が育つ過程を見せる「ファームガーデン」。6月号でご紹介したとおり、地面から一段高くなった「レイズドベッド(立ち上げ花壇)」が点在し、主に野菜が植えられていますが、中には多種多様な花だけのベッドもあり、これが「カッティングガーデン」です。カッティングガーデンとはその名のとおり、切り花用の庭。昔からヨーロッパでも日本でも、花が入手しにくい田舎では菜園の一隅で室内に飾るための花を栽培する習慣がありました。それが発展したもので、十勝千年の森のヘッドガーデナー、新谷みどりさんによれば、欧米では見るだけの庭より、毎日生ける花が収穫できる庭をつくりたいという人も少なくないそうです。
花摘み庭づくりの成功のポイントは品種選びと摘芯(てきしん)。まず生長が早く分岐しやすく、脇芽がすぐ伸びて次の花が咲く一年草を主に選びます。また、花好きが陥りがちな失敗が、摘芯を惜しんで茎が間延びし花が少なくなってしまうことですが、花を多く咲かせるためと心を鬼にして、こまめに切ること。
新谷さんいわく、「どんどん切って生花として使っていると、植物がそれに応え、次から次へと咲いてくれるので、だんだん楽しくなってきますよ」。
さらに、眺めて美しいことも大切。こちらのおすすめは混植です。なるべく少量多品種を混在させたほうが土の性質も偏らず、お互いが支え合ってうまく育つのは、花も野菜も同じだと新谷さんはいいます。
レイズドベッドに苗を植えつけたばかりの頃。列植えを基本に、全体を11ブロックに分け、境目にダリアを配置。ブロックごとに赤系、ピンク系など、色の組み合わせを変えている。「北海道では難しいですが、暖地なら夏に大きくなる植物と一緒に、春先から初夏まで咲く背丈の低い植物を植えるといった二毛作の楽しみも可能なので、上級者はチャレンジしてみては」と新谷さん。約10×1.5メートルの大きなレイズドベッド(立ち上げ花壇)いっぱいに、ダリア、アマランサス、ニコチアナなど多種多様な花が混植されたカッティングガーデン。上の植えつけ直後の写真と比べると、見事な生長ぶりだ。