［特別インタビュー］五木寛之への10の質問 第4回（全5回） 1月に上梓されて以来、10万部を超えるベストセラーとなった五木寛之さんの『捨てない生きかた』。“捨てない”ということを主題に、個人としての生き方から、国家論・文明論まで展開する同書。五木さんがこの著書で語る“捨てない”という言葉に込めた真のメッセージを10の質問から紐解きます。
前回の記事（Q4）はこちら＞＞ Q5「断捨離」について、どう思われますか？
五木 断捨離は、精神的な意味がある行為だからこそ広まったと思います。海外では、合掌して、感謝の気持ちを持って捨てるという姿に心打たれる人が多くいると聞いています。
けれども僕にとって、ガラクタは状況によって、急に存在感を示すことがあるので、捨てるモノと捨てないモノを区別できません。もののない時代に生きてきたから、根底にもったいないという考えもある。いつか使えるのでは？と思って、とっておいてしまうというところもあります。だから、ゴミ屋敷になっていても、モノに囲まれている生活は、心強くていい感じなんです。僕なんかは、北欧モダンのようなミニマリズムの家に住んでいたら、なんと寂しいことかと思ってしまうでしょうね。
「人生100年時代。孤独を楽しむためにも、回想の友となるモノは大切です」
ジャケットは既成品を買うが、スラックスはすべてオーダーメイド。30年ぐらい前から、季節ごとに３本ずつ諏訪さんという職人に仕立ててもらっていたが、10年ぐらい前に亡くなってしまい、今は新しいスラックスは買わない。写真は1970年に仕立てたもの。はくたびに、諏訪さんの言葉を思い出すそうだ。
