屋外リビングのある暮らし 魅惑の「豪邸」拝見 第3回(全17回) 上質なアウトドア家具の普及や設備の進化、内外をひと続きにするプランの革新などにより、気持ちいいオープンエアに生活空間を広げる住まいが世界的な潮流として増えてきています。家族団らんの場として、密にならない応接間として……心からリラックスできる豊かな豪邸ライフを訪ねます。
前回の記事はこちら>> ラグジュアリーハウス設計術「6つの基本セオリー」
――都市型豪邸の名手 建築設計事務所バケラッタ 森山善之さん流豪邸とはボリュームのある家。室内には思った以上の距離感があり、家具からアート、設備まで大きな空間を満たす要素は予想以上に多いもの。
暮らしの質を上げる家具や素材の選び方から、メンテナンスの考え方まで多くの豪邸を手がけた森山さんが見出した共通項と最近の傾向とは。
パーソナルソファとアートが向かい合う、知的でコージーなライブラリー。飾り棚になる壁の書棚もアクセント。1 大切なのは住宅の「密度」
─ ラグジュアリーの本質 ─
「大きな家は密度が必要です。一つのコンセプトでつくってしまうと、ホテルのようにどの場所も同じになってしまいます。テーマを家の各要所に設定し、それに合わせて家具、建物の仕上げ、アートなどグレードの高いものを選んでいきます。すべてが調和して、豪邸はその人らしいラグジュアリーとして完成します。豪邸の建築家はプロデューサーのような役割を果たしますね」
2 高品質家具から発想する
─ 住み手の好みを生かすために ─
森山さんは依頼主と家具や建材のショールームを一緒にまわることを基本としています。「家具は建物より身近に考えられるものなので、好みを表現しやすいです。その志向が表れた家具に合わせて、建物の仕上げを考えていきます」。世界トップクラスの家具や一流のデザインとの出会いを共有し、住み手の思いを引き出すのです。
フレーム型の天蓋を設けたベッドルーム。ボリュームある空間に求心力を与える森山流の家具テクニック。3 中庭テラスは必須
─ プライバシーとセキュリティ ─
「都心の場合はいわずもがなで、皆さんが重視しているのはセキュリティです。窓を大きく。でも外から見えないように壁で囲み、視線を遮る中庭やテラスが定番です。夏に窓を開けたいけれど、防犯を完全にしたい。相反する要望を実現するのが中庭テラスです」。
空まで見えるようなダイナミックなガラスの壁や窓も、防犯の配慮があってこそ生かされるのです。
4 本物の素材と設備
─ ごまかしがきかないグレード感 ─
「窓や建具、キッチン、バスなどは、高級な既製品とオーダー品を組み合わせることが多いですね。基本はオーダーですが、特にこだわらず既製品のほうがグレードが高ければ、そちらを選びます。ものを見る目を持つ住み手が、毎日使って満足することが必要です」。
床や壁に天然石を使うときは、森山さんが石の目や向きを合わせて表情をつくり上げることもあるそうです。
5 家族で楽しむ健康施設
─ プールから体育館まで ─
自宅での運動習慣が注目される中、ホームジムは必須のスペースに。「以前はマシンやゴルフ、ヨガなどコンパクトなスペースが主流でした。最近はスポーツを一人で楽しむのではなく、中庭にプールやバスケットコートを設けるなど、自宅でも家族で一緒に楽しむスタイルに変わってきています。バレーやバスケ、卓球など大勢で一緒に運動できる“おうち体育館”のような要望もあります」。
6 竣工後のホームケアが大事
─ スタイリスト、設備コンシェルジュ、ハウスキーパー ─
「広い家は維持費用もかかります。大切なのが住んでからの家をケアするチームづくり。家の清掃やキッチンやバスのお手入れを担うハウスキーパー、防犯スペシャリスト、家具やアート、花を定期的に入れ替える専任スタイリスト、設備系の保守管理マネージャーなど、設計の時点からチームを組んで、家を守り育てていきます」
撮影/下村泰典 取材・文/本間美紀 スタイリング協力/山田喜美子
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。