憧れの軽井沢ライフ 第4回(全24回) 本物の軽井沢別荘文化を知り、この地をこよなく愛する人々の別荘ライフと軽井沢の本物の暮らしを追求する話題のホテル、美食の新潮流を紹介していきます。
前回の記事はこちら>> 坂倉竹之助さんの軽井沢別荘(2)
別荘設計の原点、森に浮かぶ自邸別荘(ツリーハウス)
坂倉山荘昼間は外の自然を眺め、夜は間接照明のもと、ほの暗さを楽しむ。坂倉さんの建築哲学に貫かれたリビング。“夜は暖炉の火とろうそくの灯りだけで十分落ち着くし、月の光があればさらに明るく気持ちがよい”
坂倉竹之助さん(建築家)旧軽井沢の西村別荘から車を南へ走らせると、緑の木立の間から坂倉竹之助さんの山荘が見えてきます。とはいえ、その全貌は樹木に遮られ、見通すことはできません。「森に浮かぶツリーハウスをつくりたかった」という坂倉さんの言葉どおり、ピロティ形式の建物は、自然の一部として埋もれるように付近の環境と調和しているのです。
この家のプラン上の核心は、屋根のあるテラス。
「夕方、テラスのソファに座って山の緑を眺めながらコーヒーを飲みたい、というのが別荘づくりの始まりでした。そのため、あえてテラスの向きを西向きにしているんですよ」と坂倉さん。自然と対話するテラスは、西村別荘とも共通する要素。
また、そのテラスの両側にはリビング・ダイニング・キッチンと寝室がそれぞれ振り分けられ、各部屋や通路から大開口を通して目の前の木立が眺められるという趣向も、伊作が実践した家づくりとつながります。
リビングのさらに奥には、3方ガラス張りのダイニングが。樹木に囲まれた空間には独特の浮揚感がある。「この家が完成したのは、約30年前で、以来、建物にはまったく手を入れていません。建物には古びたコクが出ることが大切だと思っていますから」。建物の経年美化と歩調を合わせ、テラスから見える樹木も生長し、以前は見えていた浅間山も見えなくなったとか。
「その半面、木に囲まれたことで自然との近さがより実感でき、近景で四季が楽しめるようになりました」。森に溶け込む山荘は、坂倉別荘建築の原点となっています。
フォトギャラリーで詳しく見る 撮影/本誌・西山 航 取材・文/冨部志保子
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。