坂倉竹之助さんの軽井沢別荘(3)自然に溶け込む平屋の佇まい
藤田 晋邸国内外に別荘を所有する藤田さんが、軽井沢に建てた別荘は、敷地の南側に広い庭を備えた高床式の平屋建て。規模の大きな建物だが、高さを抑えて、樹木を配したことで、隣家のある南からはほとんど見えない。“建物の形などは
大いなる自然の中では誰も気にも留めてくれない”
坂倉竹之助さん(建築家)広大な庭を配置したサイバーエージェント代表取締役、藤田 晋さんの別荘。坂倉竹之助さんがトータルプロデュースをしたこの家は、多忙な日常を送る藤田さんにとって家族と過ごす、かけがえのない場所となっています。
「もともと坂倉先生とは、お住まいだった湘南の別荘を譲ってもらったことがきっかけでご縁ができました。その別荘がとてもセンスがよくて。いつか軽井沢に家を建てる際は、ぜひお願いしたいと思っていました」と藤田さん。
その後、現在の土地に出会い、坂倉さんに設計を依頼。その際、おおまかなリクエストだけを伝え、あとは坂倉さんに一任したといいます。
その理由を、藤田さんは軽井沢という土地柄ゆえだと話します。「軽井沢には成熟した文化があり、東京でいうと銀座のような場所。長く住んでいる人も多いので、周辺環境に威圧感を与えたり、景観を損ねたりするような建物ではなく、また大勢の人をもてなすような迎賓的な要素も不要でした。
見せるための別荘ではなく、家族と一緒に暮らすように過ごす場所にしたかったんです。その点、幼少期から軽井沢に縁があり、別荘ライフの本質を熟知している坂倉先生なら信頼できると思いました」。
そうして完成した別荘は、すべての部屋から南に広がる庭を眺望できる高床式の平屋建て。屋根付きテラスを中心に、プライベートエリアとパブリックエリアが分離しているシンプルな構成には“坂倉イズム”が結実しています。
住まいの中には、家族で楽しむための本格的なシアタールームや趣味の麻雀ルーム、スカッシュコートなども完備され、まさに暮らすように楽しむための空間づくりが実現しています。
その中で藤田さんがとりわけ気に入っているというのが、家の中心に配置された屋根付きテラス。
屋根に守られたテラスは、風に揺れる葉音を聴きながらくつろげる至福の場所。「春から秋までの午前中が特に心地いいんです」と藤田さん。目の前に広がる庭は、ご子息にとって飽きることのない探検場でもあるという。「気候がいいときは、たいていテラスで本を読んでいますね。気持ちのいい空気を吸いながらゆっくり過ごす時間は最高です」。
実は、藤田さんがそんな思いになったのは去年からだといいます。「この別荘が完成して今年で7年目になりますが、コロナ禍を機に、そのよさを改めて実感しています。以前は、慌ただしく1泊して帰るという使い方でしたが、リモートワークが浸透した今は、頻度も滞在日数も以前より大幅に増えました。許されるなら、ずっと軽井沢にいたいくらいです」。
屋根付きテラスに隣接するリビングダイニング。庭に植えたモミジが南からの日差しを程よく遮ってくれる。この場所が第二の住まいになるのが理想だと話す藤田さん。軽井沢での日常が、仕事の新たな活力につながっていることは間違いありません。
“木々の匂い、風の音、鳥のさえずり、太陽のぬくもり、どれをとっても屋外にはかなわない”
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