憧れの軽井沢ライフ 第6回(全24回) 本物の軽井沢別荘文化を知り、この地をこよなく愛する人々の別荘ライフと軽井沢の本物の暮らしを追求する話題のホテル、美食の新潮流を紹介していきます。
前回の記事はこちら>> レーモンド流儀の軽井沢別荘(1)雄大な浅間山を独り占めする絶景の山荘
N邸ここまで浅間山のパノラマが一望できる立地は少ない。建築家の北澤興一さんは眺望を邪魔しないウッドデッキを設けた。少女時代からこの土地になじんできたNさんはここで日に何度も変わる山の色合いを、飽きることなく眺めるという。杉丸太で六角形に囲み、眺めと風通しを確保した木造の大空間
N邸はアントニン・レーモンドの「軽井沢新スタジオ」(7月30日配信予定の記事、または『家庭画報』2021年8月号48~49ページを参照)を、現代の別荘として再解釈して建てたセカンドハウスです。奥さまのお祖母さまが大正時代から大切に住んでいた軽井沢の別荘を受け継ぎ、かつてレーモンド建築設計事務所(当時)に在籍していた愛弟子・北澤興一さんに設計を依頼し、建て直しました。
この家は「新スタジオ」の十二角形の考え方を六角形に集約させています。六角形の空間の魅力は「面によって暮らしのシーンが変わること」とNさん。
2面の大窓では雄大な浅間山を真正面から眺める、ある面にはアームチェアを置き、丸太が空に伸びるような建築空間を味わう、大開口の対面では薪ストーブの炎を楽しむなど、大空間でありながらさまざまな過ごし方ができます。
浅間山が見える北側は全面開口とし、そこを風と光が交錯するように抜けていきます。「別荘というのは土地の風を味わう場所でもある。冷涼な土地の風をどう通すか。それだけで空調設備はいらなくなる」と北澤さんはレーモンドの思想を読み解きます。
六角形リビングは求心力を持つ空間。Nさんが最も気に入っているのは、天井の高さが生み出す開放感だという。「適した径の磨き丸太が手に入らないと、この空間は実現しない」と北澤さんが苦心したのはレーモンド式工法を実現するための材の確保。床材も短尺材を中心に向かっていくように張っている。キッチンは無垢材の家具カウンターで隠し、カウンタートップは手になじむように角を丸く仕上げている。細かいところまで「道具としての家」になるように気を配っている。完成は2020年。“軽井沢で空調を入れるなんてありえない。プラン上、通気を図れば必要ない"
北澤興一さん(建築家)設計/北澤建築設計事務所 撮影/西山 航 取材・文/本間美紀
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。