ホテルライクな究極の空間「豪邸マンション」第3回(全7回) セキュリティやホスピタリティ、立地のよさゆえ、富裕層向けマンションの人気は衰え知らず。海外体験などから、ホテルのように美しく洗練された空間に住みたいというかたも増えています。IT時代、ウィズ コロナを踏まえ、機能性と利便性を兼ね備えたリノベーションの最前線を紹介します。
前回の記事はこちら>> 子どもの独立を機に、部屋をつなげて夫婦二人の一室空間に
Q邸(東京)
特注の床に左官仕事のマントルピースなど、特徴的な質感を組み合わせることで、大空間に豊かな調和を生み出している。キッチンを開いて広々とした大空間へ
Qさんご夫妻が暮らすのは、外国人向けにつくられた、築30年の邸宅マンション。選りすぐりの異素材が織り成す広がりのある居住空間は、建築家との出会いから完成まで2年の歳月を費やして誕生したものです。
「子どもの結婚を機に、夫婦二人の暮らしに合わせた住まいにつくり変えようと思いました」と話すご主人。住み替えではなく、住戸内すべてを解体するスケルトンリフォームを選んだのは、都心でありながら緑豊かな立地環境や地下駐車場からのスムーズな動線など、このマンションならではの魅力ゆえ。こうしたアドバンテージを生かしながらQ邸独自の間取りや内装を実現するのが、リノベーションの目的でした。
Before以前のリビングは、白を基調としたシンプルな空間。折り上げ天井は、そのまま生かされた。After大空間を引き締めるマントルピースバイオエタノール暖炉が大空間のポイントとなっている。手前にある「モルテーニ」のラウンジチェアは、リノベーションにあたり、ご夫妻が最初に購入した家具。そのためのパートナーとして「カガミ建築計画」の各務謙司さんに依頼。ご夫妻は各務さんに、独立キッチンをオープンにして二人一緒に使えるようにしたいこと、複数ある浴室やトイレを整理して空いたスペースにクロゼットや書斎をつくりたいことなどを伝えました。ご主人いわく「あまり細かくいわず、どんなプランが出てくるかを楽しみにしていました」。
しかし、プランより先に各務さんが提案したのは家具選び。当初はいきなり家具から入ることに驚いたといいますが、奥さまは「置きたい家具のイメージを持ちながら空間づくりを進めるのは、実は自分たちの中にある理想を形にするよい方法だったと後から合点がいきました」と振り返ります。
Beforeもとのキッチンは独立型。広さはあったが、空間同士のつながりがなく使いづらかった。After全方位が見渡せるキッチンに改修「リネアタラーラ」のキッチンを中心に、緩やかにつながるダイニングとリビング。大理石カウンターは凹凸感のあるレザー加工仕上げ。キッチン脇にはパントリーが設置されている。その後は、素材や仕上げ材の組み合わせや動線計画、広い一室空間の中でのコーナーのつくり方等々を一つ一つ決めていったというご夫妻。インテリア好きなお二人にとって、それはとても楽しい時間だったのだそうです。
「間取りや内装から家具、家電選びまでこだわったことで納得のいく住まいができました」と話す奥さま。表情豊かな上質な空間が、その言葉を裏づけているようです。
壁を取り払い、書斎コーナーに
リフォーム前は壁で塞がれていたリビングの一角を書斎コーナーに。L字型のテーブルと飾り棚を設置したこの場所は、主に在宅時のワークスペースとなっている。 〔特集〕ホテルライクな究極の空間「豪邸マンション」
撮影/本誌・西山 航 スタイリング/山田喜美子 取材・文/冨部志保子
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。