ホテルライクな究極の空間「豪邸マンション」第5回(全7回) セキュリティやホスピタリティ、立地のよさゆえ、富裕層向けマンションの人気は衰え知らず。海外体験などから、ホテルのように美しく洗練された空間に住みたいというかたも増えています。IT時代、ウィズ コロナを踏まえ、機能性と利便性を兼ね備えたリノベーションの最前線を紹介します。
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K邸(東京)
家族の“今”を見据え心地よさをデザインする「ミノッティ」のソファと北欧の名作椅子、水色のボールチェアが個性を放つリビング。壁面の草間彌生作のアートはKさんの長年のお気に入りの一つ。向かって右側にはアウトドアリビングとして利用しているバルコニーがある。メゾネットタイプのタワーマンションから、戸建て風の低層マンションへ――。独身時代から家族を持つ現在まで、ライフスタイルの変化に合わせて幾度か住戸を住み替えてきたKさん。子育て中の今は、以前から所有していた低層のメゾネットマンションに家族4人でお住まいです。
「育ち盛りのお子さん2人との日常を大切にするために、キッチンを広くして生活動線を見直したいこと、またゆったりと過ごせるよう上階の浴室を広げてテラスに面した場所に配置したいというご要望をお持ちでした」と話すのは、これまでK邸のリノベーションを4度手がけてきた「横堀建築設計事務所」のコマタトモコさん。
要望を受け、住戸内を解体したうえで間取りや動線を再構築。下階では廊下の壁を取り払ってキッチンスペースを広げ、その横に子どもが遊べるファミリールームを新設。隣接するダイニングでは、上下階の空間的なつながりをあえてなくし、高窓からの日差しと高天井の心地よさが堪能できる独立した吹き抜けプランが提案されました。
高天井の心地よさ吹き抜けのダイニングは、天井高6メートル弱。「エルメス」のチェアに、横堀建築設計事務所のオリジナルブランド「CASA BUKU」のダイニングテーブルを合わせて。そして上階では、改装前には主寝室のセカンドルームだった空間を大型のジャグジーバスを備えた浴室に改修。ルーフバルコニーに面したこの浴室を洗い場のないドライスタイルとすることで、インテリアも楽しめるリビングのようなスペースとしています。
アクアリウムが迎える玄関大判タイルを張った床とムラを生かした左官仕上げの壁。ビルトインした水槽の向こうはゲスト用のトイレで、トイレの中から水槽を見ることができ、玄関からはトイレが見えないよう工夫されている。水槽のある玄関ホールから右にはリビング、左に進めばファミリールームとキッチンが配置された下階と、ホールを挟んだ両側に主寝室と家族のための浴室を備えた上階。ゆったりと配置された空間の要所要所を彩るアートと床や壁などに施された職人の手仕事が、住まいに確かな存在感をもたらしています。
住み手の想いとライフスタイルを反映した空間には、今を心地よく過ごすための工夫とセンスが息づいていました。
〔特集〕ホテルライクな究極の空間「豪邸マンション」
撮影/本誌・西山 航 取材・文/冨部志保子
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。