テーブルコーディネーターやインテリアスタイリストとして『家庭画報』のページを彩ってきた
横瀬多美保さん。あらゆるものに美を見いだし、独自の感性でリュクスな空間を創造し続けてきました。そして今、しっくりくるのは上質でありながらもくつろぎ感のあるスタイル、といいます。“生活の中に、美が息づく”そんな日々の暮らしに豊かさを添える素敵なアイディアを巡ります。
LESSON29
伝統を今様にアレンジして節句を祝うおもてなしを
5月5日は端午の節句。男の子の成長を祝う日として知られていますが、本来は季節の変わり目に邪気を払うことを目的とした行事でした。
ゴールデンウィーク中は、家族や友人が集まりやすいタイミング。
たとえ大人であっても、ハレの日らしい室礼(しつらい)で季節感を感じるテーブルでのおもてなしを楽しんでみてはいかがでしょう。
インテリアレッスン21で棚の中に置いた金の屏風を、この日はテーブルの上に立て、床の間のような“飾る場”を設えた。さらに脚付き漆器の上に乗せることで、小さな飾りの存在が強調される。Tips1
手持ちの道具を見立てて節句飾りに
「子供が幼かった頃は兜を飾ったりもしていましたが、大人だけの暮らしになった今、節句のためだけの特別な飾りというものを持たなくなりました。代わりに、その行事や季節感を見立てやプラスアルファの工夫で表現するんです」と、横瀬多美保さんは季節の行事のコーディネートのコツを話してくださいました。
端午の節句のおもてなしに、リビングルームのデコレーションテーブルの上に飾ったのは、掌に乗るサイズの「ヘレンド」製の透かしボンボン入れ。お母さまが大切にしていたコレクションの一つです。
「絹の紐5本を束ねて巻きつけて、端午の節句に魔除けとして飾る薬玉に見立てました。薬玉は青・赤・黄・黒・白の5色の糸を垂らして飾るのが伝統的ですが、ボンボン入れ自体の色が多いので、紐の色は1色だけに抑えています。きれいに流れるように結んで、絹の紐の美しさも際立たせます」。
行事にまつわる道具を意識しながら、手持ちのアイテムをそれに近づけるような感覚で工夫を凝らすことで、独創的なデコレーションが生まれました。