〔今月の引き出し 1〕
新年を寿ぐ“ハレ”のきもの
皆さま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。まずは我が家の自慢の愛犬とお行儀よく居並び、ご挨拶申し上げます。名前は父の命名で、左は女の子で「凛子」(愛称はリンゴ)、右は男の子で「端午」(タンゴ)。戌年の今年は、この子たちにもこの連載に度々登場してもらう予定ですので、どうぞお楽しみに!
大山家のお正月は、晴れ着で母と記念撮影
子どもの頃には、三が日にきものを着せてもらえることが嬉しくて仕方ありませんでした。 まずは、我が家のお正月のお話を。私が子どもの頃の年の瀬は、今では考えられないくらい大変でした。家中の畳をあげるような大掃除をしながら、お台所はおせちの準備で除夜の鐘が鳴るまでひっくり返っていたほどです(笑)。
そんな大騒動から一変、夜が明けて元日を迎えると、どの部屋も静寂に包まれ、清々しく、ピカピカで。いつもは結城紬や大島紬をきている母が、染めのきものに澄んだ色合いの羽織などを着て座敷に現れると、「あぁ、お正月だなぁ」と感に入りました。
この当時から記念撮影は愛犬と一緒に。シックな小紋に浅緋(うすきひ)の羽織がどことなく艶やかで、新年を迎える母の喜びが羽織の色から立ち込めていました。 晴れ着に身を包むと、門松の前や玄関で記念撮影をするのが、いつの間にやら大山家の習慣になりました。子供の頃はもちろん、娘時代も、大人になってからも。そんな時は“いっちょまえの女”というよりも、母を前に“あなたの娘”でありたくて、殊更に娘らしい華やかな色柄を選んでいました。母は嬉しそうに「似合うわねぇ」と言って目を細め、私は母のそんな表情を見るのが大好きでした。
時には愛犬だけでなく、愛猫も登場。私にとっては「ちょっと派手かな?」と思える訪問着も、母からすると私の年相応の晴れ着にふさわしく感じられたようです。