新しく創り上げる役、ずっと目にしてきた役。
二つに取り組む公演になりそうです
――観客を魅きつける確かな演技と、どこか古風で大人びた佇まいで、若手女方として、さまざまな舞台に挑戦している中村梅枝さん。同世代の花形歌舞伎俳優さんが“平成生まれ”と括られることが多いなか、少しお兄さん株の昭和62年生まれです。
梅枝「実は、同世代だけでの花形歌舞伎公演というのは昨年の松竹座での公演くらいで、あまり経験がないのです、近い年齢の女方の役者が少なかったこともあり、若い頃から尾上菊五郎のおじ様や父(中村時蔵さん)など先輩方が出演する大舞台に出させていただいてきたことは、とても恵まれていたと思っています」
――大舞台や大役の経験を積むなかで、いつか演じてみたい役は何でしょうか。
梅枝「最終目標は「茨木」です。長唄の大曲ですし、自分の技量やチャンスだけでなく、一緒に舞台に出てくださる方が揃わなければ実現しない演目ですが、憧れますね。六代目中村歌右衛門のおじ様と二代目尾上松緑のおじ様の神がかった舞台を映像で何度も拝見して、いつか演ってみたいと、ずっと思っていいます。」
――最近では、尾上松緑さんや尾上菊之助さんなど、比較的年齢が近い先輩が座頭となる公演も増えてきました。
梅枝「若い座組だからといって気軽な雰囲気、というわけではありません。おじ様たちとご一緒するよりも、逆に責任が増す気がして緊張しますね。でも、若いチームだと、ああしよう、こうしようと意見を言い合って同じ理想に向かってお芝居を創っていく手応えは感じます。3月の国立劇場での公演も、そんな雰囲気になるといいですね」