母と娘の新たなる邂逅 内田也哉子の「衣(きぬ)だより」第7回 雨にまつわる諺には、暗い空模様とは裏腹に気持ちを前へと向かわせるものが多くあります。ことに結婚式という人生の「晴れ」舞台に降る雨は神様の嬉し涙であり、苦難が好転する象徴……。28年前、也哉子さんが夫婦の契りを結んだ佳日も恵みの雨に包まれた一日だったそうです。そんな思い出とともに希林さんの衣をまとうと、雨上がりの虹のように、也哉子さんの表情も優しい光に照らされました。
前回の記事はこちら>> きものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。内田也哉子さん(うちだ・ややこ)1976年、東京生まれ。文筆業。夫で俳優の本木雅弘氏とともに3児を育てる。著者に『会見記』『BROOCH』(ともにリトルモア)、『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)、中野信子さんとの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)、『新装版 ペーパームービー』(朝日出版社)など多数。近著に『点 きみとぼくはここにいる』(講談社)、『うみ』(岩波書店)。2023年5月10日に渋谷公会堂で開催された『母に感謝のコンサート』に特別出演。トリプルセブンの運試し ── 内田也哉子
平成7年7月7日に夫と私は、明治神宮で結婚式を挙げた。
結婚するという事は、その2年ほど前から話していたが、このまるでスロットマシーンの大当たりみたいな日取りは、母の「絶対に忘れないし、7が三つも重なるなんて面白いじゃない」というアイディアから始まった。
そして、思い立ったが吉日、すぐさま神社の社務所に問い合わせ「ちょうど午前中が空いてるって」と夫が予約を入れてくれた。
そもそも私たちは、吉日や大安などにさしたるこだわりがなかったので、夫の仕事のスケジュールを鑑みて、すんなりと神前式の日にちが決まった。そして、 神宮の森にひっそり佇む、明治天皇の親王御殿として建てられた桃林荘という館で古めかしい披露宴をひらいた。
荒波の上をたおやかに飛翔する鶴の振袖姿の也哉子さん。蛇の目傘の下でご主人と向かい合うショットは一幅の日本画のよう。「明治神宮で娘の結婚式を挙げていただいたんですが、雨に濡れそぼった樹立の緑がとても美しく、印象的でした」と希林さんは後に語っています。