初めて歌舞伎と出会う人に、何を伝え、どう好きになってもらうか。新しい挑戦です
すらりとした細身の肢体でさまざまな女性像を表現し、観客の共感を呼ぶ、坂東新悟さん。国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で“歌舞伎のみかた”の解説をつとめるのは今回で二度目。一昨年の公演では、すっぽんと呼ばれる花道の穴からせり上がって登場した途端に客席から歓声が上がり、よく通る声でのわかりやすい解説が、初心者からも評判を呼びました。
新悟「前回の“歌舞伎のみかた”は反省点も色々あるんです。20代半ばの僕なら中学生・高校生に近い目線でお話ができるかと思っていたのですが、性別や世代によって感じかたにも違いがありました。親子連れや女子高生には興味をもっていただきやすいと感じましたが、男子中・高校生は、素直に舞台に反応したり楽しんだりするのが恥ずかしいと感じる年頃。思うような反応が得られなかった時もありました。だから今回は、自分が高校生の時はどんな気持ちだったかをもう一度思い出しながら、なるべくシンプルでわかりやすい解説をつとめたいと思います」
中・高校生の学校単位での観劇を中心に、社会人向けや親子向け、外国人向けなどのプログラムも展開してきた国立劇場の歌舞伎鑑賞教室。昭和42年にスタートし、今回の公演期間中に、来場者はのべ600万人にも達します。公演の前に歌舞伎役者さんによる“歌舞伎のみかた”の解説がついているのでわかりやすく、初心者から歌舞伎ファンにまで、おすすめの公演。もちろん、個人での観劇も可能です。
今回上演される『日本振袖始(にほんふりそではじめ)』は、近松門左衛門による時代物の名作。坂東新悟さん演じる稲田姫が恐ろしい八岐大蛇の生贄に差し出されるところに、中村時蔵さん演じる岩長姫があらわれます。実はこの岩長姫こそ、八岐大蛇。一度は飲み込まれてしまった稲田姫ですが、そこに恋人の素戔嗚尊(すさのおのみこと)が現れて……という物語です。
新悟「神話の時代の物語のファンタジーな世界観や勇壮な立ち回りは、初心者の方にも楽しんでいただけると思います。あとはストーリーや歌舞伎の基本的な知識を、僕がいかにわかりやすくお伝えできるかですね。頑張ります!」