〔今月の引き出し〕
濃い地のきもの+鮮やか帯で艶ます涼感
板締め絞りの小千谷縮(おぢやちぢみ)に杜若(カキツバタ)の染め帯が鮮やかに映えて。いよいよ7月、2018年も折り返しに入りました。きものの世界では絽(ろ)や紗(しゃ)など、いわゆる「薄もの」と言われる夏素材を纏う季節を迎えました。人々が「暑い、暑い」と、短パンやTシャツで街中を行き交う中、日傘越しに慎ましやかに透ける夏きもののご婦人が通り過ぎる様子は、それだけで涼やかな風が吹き抜けるよう。
「薄もの」を纏うことは、きもの好きの憧れで、きもの通にとってはまさに本領発揮の腕の見せ所とも言えます(笑)。本来なら季節が限られた夏きものは贅沢品と言えますが、毎日をきもので暮らした母のタンスには、まるで眠れる森の美女のように夏きものが眠っていました。そこで、「美女」を起こすべく、母の地味な夏物に私の娘時代の派手な帯をミックスするという大得意のコーディネートで、大人可愛い夏のスタイルを演出。今回も、
前回同様に二本松市の見どころと合わせてお届けいたします。
カラフルなよろけ縞の帯で気分は七夕
二本松市は小さな城下町でありながら、実は酒蔵が4箇所もあります。中でも、大七酒造は1752年の創業以来、日本酒の最も正統的な醸造法「生もと造り」一筋で日本酒を手がける蔵元。近年はアメリカやヨーロッパなど世界的にも高い評価を得ています。この日は、二本松の文化向上にも寄与されている現・10代目社長の太田英晴さん(上写真)を表敬訪問しました。
麻の染め帯は、銀座伊勢由で一目惚れした私のタンスの一本。太田社長とご挨拶させていただくということで、きものは母の千歳緑(せんざいみどり)の夏大島を選びました。合わせた帯は、旧暦の七夕の夜に催された宮中の行事「乞巧奠(きっこうでん)」にちなんだ五色の糸を思わせる、カラフルなよろけ縞の染め帯。深みのある色合いの夏大島に合わせると、とりわけ七夕の見立てが際立ちます。
パナマの草履は「祇園ない藤」、バッグは今では珍しい柳を編んだものです。社屋には太田社長の審美眼にかなった一流の美術品で整えられ、さながら美術館のようです。酒造りの工程や安達太良山をデザインした作品は、二本松在住のステンドグラス作家・千代豊子さんによるもの。