祖母から母へ、そして母から娘へ。受け継がれたきものや帯を今の時代に感覚でお洒落に楽しむことは、きものを礎としてきた日本女性にとって不変的なテーマといえます。 『きものSalon 2017-18年秋冬号』で特集した母譲りの箪笥の活用術「母のタンス、娘のセンス」を、同企画のタイトルの発案者でもある女優の一色采子さんが、来月から一年間に渡って連載します。 約10年前に他界された母・和子さん譲りの一揃えを、今の気分で着こなす一色さんの“娘のセンス”。 まずはプロローグとして、きものSalon本誌でご紹介した内容をお目にかけます。
母の訪問着を、イブニングドレス感覚でスタイリング
アールヌーボーの絵画のような訪問着は、お母様が晴れの場で装った、とっておきの一枚。思い出の写真は、昭和48年にお父様が日本芸術院賞を受賞された式典の日のワンショットです。上品な灰桜色のきものにお母様は松葉色の有職文様の袋帯で重厚感を演出したのに対して、一色さんはビロードでバロック調のモチーフを織り出した帯をあわせ、イブニングドレスのようにワントーンでまとめて。
帯締めの房や草履の前緒、ネイルに、ほんのりと色香が薫る赤のアクセントを小さく効かせるスタイルが、一色さんのこだわりです。