第12回
お江戸の文化を堪能できる「東をどり」へ
ゴールデンウィークも明けた5月半ば。きものSalon古谷編集長から嬉しい提案が。
「そろそろ「東をどり」の時期だよ。江戸の文化を学ばせてもらいに行く?」
「東をどり」と言えば、新橋界隈の芸者のみなさんが一堂に会して踊りや長唄、三味線をお披露目する会。是非とも行きたいです!
でも待って、何を着て行けばいいのでしょう!?
袷か単衣か。そして場に相応しいのは やわらかもの?それとも紬?
「東をどり」は5月23~26日。
5月といえばまだ袷(あわせ)の時期。にもかかわらず、ここ数日の暑い日差し。さらに私たちが出かける日の予想最高気温は……31度!
ルールを守って袷のきもので伺うべきでしょうか。それからもう一つ、何を着て行けばいいのでしょう……。
ここはきものSalon編集部。きものの達人である先輩方にアドバイスをもらうことに! まずはベテランエディターMさんに伺いました。
Mさん「5月は袷の時期と言われてきたけれど、これだけ気候が変化しているからね。本誌『きものSalon』でも気温が高くなったら単衣(ひとえ)でお出かけしましょうと提案しているの。無理して体調でも崩したら、せっかくの楽しいお出かけが台無しになってしまいますから」
単衣でお出かけしていいのですね! これでだいぶ安心しました。
Mさん「それから何を着るかだけれど、本来であれば薄手のやわらかものがいいわ。透けてしまうものはまだ早い気がするから、染めの単衣がおすすめ。
紬もいいけれど、もともとは日常着だったのよ。とは言っても今の時代、きものを着ること自体が特別だから着てもいいと思います。ただ紬を昔の人がどのように着ていたかを知ると、他の選択肢も考えてみるのでは? 以前、
万能の一枚で私がお勧めした飛び柄小紋がぴったりかもね」
そして古谷編集長にも伺いました。
古谷編集長「そうね、春に行われる京都の「都をどり」なら淡い色の後染めのきものを着たいけれど、今回行くのは「東をどり」でしょう? 私なら、江戸小紋や紬で粋な着こなしがしたいけどな」
京のはんなり、江戸の粋ですね! そしたら色のはっきりとした縞の紬なんてぴったりな感じがします。
古谷編集長「「東をどり」は芸者さんたちの発表会。花柳界のお披露目の場にはどうかしらね。縞や格子はカジュアルに見えることもあるので、洒落た装いにするにはハードルが高いのよ。
お出かけする場所に、自分はどんなきものを着たいかな、どういう気分で行きたいかなと考えてきものや帯、帯揚げや帯締めをコーディネートしてみて。きもの選びは楽しい気持ちがいちばん。決して怖くもないし、大変なことではないのよ」
ルールや格式ばかりについ気をとらわれておりました。着て行く場所にどんな自分でありたいかの“気分”、大切にしたいです!
お二人のアドバイスをまとめてみました。
・5月は暑ければ単衣(透けない素材)も可。気温で選ぶのがきものSalon流(格のある茶席や結婚式など正式な場では袷)。・現代ではきものを着るだけで特別感が出るため紬もOK。・どんな場所に行くかを考える。今回なら「粋」をテーマに考えてみては?・縞格子(しまごうし)はカジュアルに見えてしまうこともあるので、初心者が今回の場に合うよう着こなすのは難しい。そして私たちなりに必死で考えた「東をどり観劇コーディネート」がこちらです。
まずはE子。単衣の結城紬に、母からもらった白の博多織・献上柄の名古屋帯を合わせました。ヘアスタイルは「粋」な雰囲気が少しでも出るように前髪をまとめ上げ、きりりと引き締めました。こうしてヘアスタイルや小物で工夫すると、きものや帯が少ない私でもコーディネートを色々と楽しめます。続きましてA子。ピンクの横段の単衣です。合わせる帯に散々迷い、古谷編集長のヘルプによって織元である夢訪庵・桝蔵さんの帯をお借りすることに。可愛らしい蝶々の柄ですが、イタリア製の布のパッチワークのおかげで大人の品格が漂っていました。