打掛 白綸子地藤菊牡丹七宝模様、掛下帯 紫繻子地石畳牡丹菊折枝模様 どちらも天璋院篤姫所用(江戸時代 19世紀/東京国立博物館蔵)第32回
事前予約で鑑賞! 待望の特別展「きもの KIMONO」へ行ってきました
この春に開催予定だった特別展「きもの KIMONO」。開催期間を変更し、無事に始まりました! 今回はわたくしE子が会場内の様子を少しだけご案内させていただきます。
まずは、混雑緩和のために導入された、日時指定券をインターネットから事前に申し込みをしなくてはなりません。これは密を避けるため、時間ごとに区切って入場数を制限するためのもの。指示通りに入力するだけなので、とても簡単です。
日時指定券の申し込み画面。日付を選択すると空き時間だけではなく、空き状況も分かります。平日は時間さえこだわらなければ前日でも空いていることが多いのですが、週末は少し早めの予約がよさそう。夕方は比較的空いている様子です。正門でのアルコール消毒&検温を通過し、会場である平成館へ向かいます。きもの姿の方もお見かけしました。平成館内での受付では、申し込みの際に発行されたQRコードを提示して入場します。いよいよ当日。正門での検温や各所に消毒用スプレーが配置され、感染予防の配慮を感じます。そして同じ時間帯に予約した方々と平成館の入り口で待機。あれ? 事前予約といえども、ある程度の混雑を覚悟していたのですが、それほどでもありません。
展示の多さに圧巻! 会場を歩いてたどる、きものの歴史
きものは、もともと装束の下着だった小袖が原型なのだそうです。それが室町時代の後期頃、表着へと変化を遂げたと言われています。特別展「きもの KIMONO」は、鎌倉時代から現代まで、800年以上生き抜いてきた「きもの」を、約300件もの展示品とともに紹介するという、かつてない規模のきもの展なのです。
それではいざ、会場内へ!
(※作品の写真はすべて報道内覧会にて撮影したものです。会場内の撮影は禁止されています)
重要文化財 縫箔 白練緯地草花肩裾模様(安土桃山時代 16世紀/東京国立博物館蔵)随分と袖幅が狭いです。これが初期小袖の特徴だそうです。
右・小袖 白絖地菊水模様 (江戸時代 17世紀/奈良県立美術館蔵) 中・小袖 紅綸子地水葵模様(江戸時代 17世紀/愛知松坂屋コレクション J.フロントリテイリング史料館/前期にて展示終了) 左・邸内遊楽図屏風(江戸時代 17世紀/東京 サントリー美術館蔵/前期にて展示終了)惣鹿の子絞りの小袖を発見(写真中央)。どれだけの手間と時間によって生まれた美しさなのでしょう! そう言えば
先日の取材で「京絞り 寺田」の寺田 豊さんが、「今では再現できない絞りもあるんです」とおっしゃっていました。もしかしたらこの会場内にも再現不可能な絞りの技法があったのかもしれません。
屏風などの絵からは、当時の人々がどのようなきものを着て暮らしていたのか、さらには衿の合わせ方や帯の結び方、髪型や履き物などがわかります。
有名な見返り美人も発見!
見返り美人図/菱川師宣筆(江戸時代 17世紀/東京国立博物館蔵)ヘアスタイルは「玉結び」、帯は「吉弥結び」という結び方をしているそうで、どちらも当時の最先端のファッションスタイルなのだそうです。そして彼女も絞りを着ていました。
右・小袖 鬱金繻子地舫舟水草模様(江戸時代 17世紀/千葉 国立歴史民俗博物館蔵) 中・小袖 白綸子地梅舟模様(江戸時代 17~18世紀/千葉 国立歴史民俗博物館蔵/前期にて展示終了) 左・小袖 淡黄縮緬地桜樹文字模様(江戸時代 18世紀/神奈川 女子美術大学美術館蔵/前期にて展示終了)それにしても、初期の小袖の小ささには驚きです。お引き摺りということは引きずっていたのですよね……。
この頃、町人たちが衣装に費やす贅沢を見かねた幕府によって、「惣鹿の子」「縫箔」「金紗(金糸)」を禁ずる命令が下されることに。しかし、これまでの技法を用いることができなくなったことで、友禅染など新しい技法が生まれたそうです。逆境を乗り越え、素晴らしい文化の誕生です!
重要文化財 振袖 紅紋縮緬地束熨斗模様(江戸時代 18世紀/京都 友禅史会蔵/前期にて展示終了)今回のポスターにも掲載されていた振袖。熨斗のリボンには絞りや染め、友禅、箔、刺繍などあらゆる技法が集結! 禁令の後に友禅染が誕生したことにより、かえってきものの美しさは広がりを見せたのではないでしょうか。
小袖 杢目縮緬地薊蝶模様(江戸時代 18世紀/埼玉 遠山記念館蔵)禁令が出ても、やはり惣総絞りの憧れを捨てきれなかった人々によって生まれたのがこの杢目絞りだそうです。惣鹿の子絞りほど手間は掛からなかったそうですが……。優雅な流れを生み出している薊の花と、ひらひらと舞う蝶がとても素敵です。