世代を超えて美を受け継ぐ母と娘のきもの 最終回(全4回) 母や祖母が着ていたきものに袖を通すと、懐かしさや愛しさが甦ると同時に、自分にも驚くほどそのきものが似合うという経験をされたかたは多いはず。大切に受け継いだきものを生かし、次の世代へ──。思いを込めて装う、母娘の姿をご紹介します。
前回の記事はこちら>> 山野愛子3代、初代の志に支えられて
「『山野愛子の新日本髪』で十三歳の振袖デビューです」
中学生のミアさんは、今年十三参りの年回り。初めての大人の振袖は、お母さまの思い出の一枚を、初代考案の新日本髪で装います。初代と同じ帯合わせに薄紅色の小物で、華やかに装うジェーンさん。お揃いのハートの足袋が隠し味です。都内屈指の眺望を誇るM・YAMANO TOWER「Club Only One」にて。ミアさんの帯揚げ・帯締め/荒川山野愛子ジェーンさん(学校法人山野学苑理事長)
山野愛子ミアさん(中学生)
ミドルネームに「愛子」という名を持つ、山野ジェーンさんとミアさん。日本を代表する美容家・山野愛子さんの志を継ぐ母娘です。
明治生まれの初代が美容の道を歩み始めたのは16歳のとき。「髪、顔、装い、精神美、健康美」を五大原則とする「美道」は、“山野”の精神として、日本のみならず世界に発信されています。
四季の花文様の黒地絽の振袖は、初代のお気に入り。ハワイでの「四回目の成人式」でもお召しになっています。
アメリカ生まれのジェーンさんが祖母の跡を継ぎ2代目となる決心をしたのは、19歳のときでした。以来、日本の伝統美を重んじながら、二部式きものや新日本髪、きものドレスなどを発案してきた初代に倣い、自由に楽しめるスタイルを提案しています。
左・モナコでの美容イベントで、自作の訪問着を着用する山野愛子さん。巻き付け式の豪華な上前をはずすと、シンプルな訪問着になる2WAYスタイル。隣は若き日のジェーンさんです。 右・初代・山野愛子さんと山野治一総長。愛子さんの「四回目の成人式」(傘寿)を祝う会にて。
今回ジェーンさんがお召しの初代デザインの訪問着は、銀通糸紋綸子ぼかし斜め取り唐草文様に、宝石の配されたドレスのような一着です。ミアさんの振袖は、初代がジェーンさんのために誂えた京友禅。十三参りを迎える今年、曽祖母考案の新日本髪を結ってのお披露目となります。
金箔の吉祥慶長文様の京友禅振袖がお似合いのジェーンさん。「人生は富士山の八合目を目指して」の初代の言葉を、ミアさんが振袖にデザインしたのは10歳のとき。「八合目から、上下の人を助け助けられ、いいことを広く伝えたい」。初代の志が、力強くお二人を支えています。
ミアさんが10歳のときにデザインした振袖。「人生は富士山の八合目を目指して」をモチーフに、ラインストーンを配した虹色の一枚。ジェーンさんが大切にする「Smile」の文字も。 〔特集〕世代を超えて美を受け継ぐ 母と娘のきもの(全4回)
撮影/森山雅智 ヘア/三田和磨〈FÉERIE〉 着付け・メイク/山野愛子ジェーン
『家庭画報』2020年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。