12月
菓子缶と西洋雑貨であそぶクリスマス
サイドボードの上にクリスマス仕様の茶道具を並べる。灯火の暖かさが心に安らぎをもたらしてくれるこの季節。茶の世界でも、夜の茶会は冬に行われることが多いようです。「夜咄(よばなし)」という趣のある名で呼ばれる夜の茶事は、ロウソクや行灯の明かりもご馳走の一つ。そんな場面を思い描きながら、今月はお家で楽しむクリスマスのひと箱を紹介しようと思います。
いただき物のお菓子の缶を茶箱に。ビビッドな赤がクリスマス気分。茶室で行う茶会とは異なり、日常のお茶は、生活空間が茶の「場」となります。部屋は生活品があふれ、また日々の雑多な営みがあります。非日常の茶の湯と、日常の茶は、ちょっとそのあたりが違う……。
そんな中、わたしは部屋のいくつかの箇所だけは、日常に紛れないよう整えるようにしています。これはお茶のためというよりは、もう少し広い意味で自身が必要としていることなのですが、お茶を楽しむ感覚と密接につながっていることも確かです。
銀の器にはチョコを山盛りに。もちろん部屋全体をいつもスッキリ整えておけるならそれに越したことはないのですが、無精者であるわたしにはとても難しいこと。
部屋の中は自分を映す鏡だとよくいいますが、それならせめて部屋のこの部分だけは「物を置かない」とか、「季節の好きなものを置く」と決め、それを守る。それはわたし自身の内側を調えることでもある、と実感しています。
プレゼント感覚で缶の中にいろいろ詰める。ダイニングにあるサイドボードの上はそういう場所の一つで、たいがいその季節に使っているお茶道具や茶箱が置いてあります。ほかには花を飾ったり、好きな置物を並べたり。
そして、この季節になると登場するのがキャンドル類。たとえ火をつけないとしても、暖かな光を想像できるアイテムです。茶箱の横にはフランス製の白いカフェオレボウルを替茶碗として積み上げ、さらにイギリスの銀のフィンガーボールにチョコレートをいっぱい盛って添えています。
アンティークのカフェオレボウルを茶碗に。茶箱は、東京から届いたお菓子の缶。数年前に友人が手土産に持ってきてくれたものですが、鮮やかな赤色のデザインがお気に入り。手放すのがもったいなくて、中に道具を組み、茶箱に見立てています。季節に関係なく使っていますが、この赤色はことさら今の季節の気分に合う気がします。
道具は、オランダ製のカフェオレボウル、イギリス製のマスタードポット、フランス製のフィナンシェ型などを茶道具に見立てたもの。どれも国内のアンティークショップで見つけた暮らしの器ですが、わたしには茶箱の道具にしか見えず、連れ帰ってきた物たちです。
毛糸のツリーやお菓子も茶箱の中に。茶箱はお茶を点てる道具類を入れるための箱なので、ふだんはお茶に必要ないものはほとんど入れません。わたしの茶箱は、きちんとした茶道とは異なる「あそびの茶箱」なので、もちろん本当は「なんでもあり」ともいえるのですが、あまり雑多になると、これもまた自分の内側を見ているようで、好ましく思えないから。
しかし、この一年の終わりの季節だけは少しだけお茶に関係のないものを入れたくなります。今回は、友人が作ってくれた毛糸のクリスマスツリー。茶箱がお菓子の缶なので、菓子入を使わずに缶の中に直接お菓子を詰め込んであそんでみたりもします。
サイドボードの上には有元利夫の線描画。サイドボードの上の壁面には有元利夫画伯の人物画を。一筆書きのようなシンプルな線で描かれた男性、ひらひらの襟の衣をまとっているのでキリスト教の聖人でしょうか。お名前がわかれば嬉しいのだけれどと思いながら、通りすがりに時折眺めている絵。
そんな他愛がない思考や瞬間が、日々の騒然とした時間の中に生まれることもまた茶箱あそびのありがたさです。
さて。今年もあと少し、やり終えたこと、やり残したこと、こもごも。部屋はまだまだ片づいていませんが、このあたりで一服しましょうか。
皆さまも良い一日を。良い一年の終わりを。来年もどうぞよろしくお願いいたします。