きものダイアリー

“伊達男”に捧げるジェンダーレスな晴れ着 内田也哉子の衣(きぬ)だより

2022.02.15

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母と娘の新たなる邂逅 内田也哉子の「衣(きぬ)だより」第2回 10代の多くの時間を海外で過ごしたという内田也哉子さん。冬休みに帰国すると、年末や正月三が日は決まって、きもの。紅い総絞りの小紋や彩りに満ちた振袖など、お母さまの樹木希林さんが見立てた初々しい装いで過ごしたそうです。そんな愛しい衣(きぬ)の記憶を手繰り寄せながら、初春迎えの装いをお届けします。前回の記事はこちら>>
内田也哉子さんきものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。

内田也哉子さん(うちだ・ややこ)
1976年、東京生まれ。文筆業。夫で俳優の本木雅弘氏とともに3児を育てる。著書に『会見記』『BROOCH』(ともにリトルモア)、『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)、中野信子さんとの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)、『新装版 ペーパームービー』(朝日出版社)など多数。また、2022年公開予定の映画『流浪の月』に出演する。

古風なアウトサイダー──内田也哉子


アウトサイダーとは、 社会の規制の枠組みから外れて、独自の思想を持って行動する人。この言葉を見て即座に思い出すのは、わが母だ。と同時に、「古風な人」と聞けば、真っ先に心に浮かぶのも彼女。まるで対極にあるはずの佇まいが共存するこのアンビバレンスこそ、まさしく彼女を表しているのかもしれない。


幼い頃の記憶に、洋服を買い与えられたことなど一度もなかった。当時の自分の写真を見ても、たいていは知人がいらなくなったお古の服を肩上げや裾上げをして着せられている。 戦時中ならまだしも、高度経済成長期真っ只中の、それなりに仕事の途切れない女優の娘がこれである。

しかし、彼女の理屈は、「物が命を全うするまで、 工夫を凝らして付き合い通す。物にも冥利があるでしょう」それを言われちゃ、幼子とてぐうの音も出ない。

おそらく母の中でも、とりわけ着物という作り手の鍛錬の結晶のような存在へのリスペクトは相当なものだったはず。けれども哀しいかな母の周りでも、友人のタンスの肥やしと化した着物が大量に見つかった。 彼女はそれらを片っ端から仕分けしては、趣向を凝らして命を吹き込むことに明け暮れた。

良いものは合わせの妙のみでいとも簡単に息を吹き返すが、もうひとつも、ふたつも垢抜けないものは、色染めをしたり、チラリと見せる裏地にあしらったり、 他の余り布と共に切り貼りしたり、ドレスに縫い直したり、どんな切れ端も無駄にせず、しまいには腰紐へ変貌させてみたり……。命を全うするどころか、一生も、二生も、 幾度となく転生させてみせた。
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