きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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楽器(がっき)
太鼓、琴、笛などの楽器は、音色が美しかったり、大きく鳴り響いたりします。それが神に伝えるためのよい方法とされ、それらの楽器を記して、物事の「良く成る」たとえとしました。能装束などの衣装に楽器が多く使われているのは、そうしたいわれによるものです。
また、美しい王朝文化の調べを奏でる楽器類は貴族の教養ともいわれ、技芸上達を願ってさまざまに文様化されています。
文様として用いられるのは、形のおもしろいものや美しいものが中心ですが、その多くは宮中で行われる雅楽で使われたものです。
琴(こと)
雅楽で用いられる筝(こと)を文様化したものです。細長い形は印象的で、現在もきものや帯に見られます。また、琴の音の高低を調節する道具の琴柱(ことじ)は、美しい曲線を持つことから単独で文様に用いられます。
鼓(つづみ)
白拍子の舞の伴奏や能楽の囃子(はやし)で使われる打楽器の鼓は、楽器文様の中ではもっともポピュラーなもの。きものや帯に、胴のくびれた小鼓が優雅な形に染めや織りで表現されています。鼓の両端の革や調緒(しらべお)と呼ばれる紐を巧みに意匠化したり、組紐などをあしらって彩り豊かに描かれます。
また、鼓に花が描かれ、飾り紐があしらわれた華やかなものは、花鼓文といいます。
笙(しょう)
雅楽に使われる笛の一種、笙を文様化したもので、奈良時代頃に日本に伝わりました。笙の形が翼を立てて休んでいる鳳凰(ほうおう)に似ているとされ、鳳笙とも呼ばれます。17本の細い竹を筒状に配し、横側についている匏(ほう)という吹口から息を吸ったり吐いたりして音を出します。文様では特徴のある竹管が印象的に描かれます。写真の笙は刺繍で表現したものです。
楽器尽くし(がっきづくし)
さまざまな楽器を散らして文様化したものです。文様になりやすい鼓や横笛、琴、琵琶などを集めたものがよく見られます。それぞれの楽器は形のおもしろさから、室町時代以降は単独で絵画などに使われるようになり、文様としても発展していきました。
【向く季節】
通年
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。