きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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割付(わりつけ)
割付文様とは、文様を構成する方法のひとつです。同じ文様を上下左右に連続させ、規則的に繰り返して一定面積の中に割り付けます。単純な文様ですが、一面に割り付けられたさまは美しく、きものや帯、白生地の地紋、帯揚げ、風呂敷、草履の鼻緒など、さまざまな和の意匠に使われています。
今回ご紹介するのは、割付文様のなかでも伝統のある身近なもの4種。ほかに
麻の葉や鱗(うろこ)、市松などがあります。
籠目(かごめ)
竹などで編んだ籠の編み目をそのまま文様化したものです。もともとは武将たちが夏に着る帷子(かたびら)に用いられていた亀甲(きっこう)形を、のちに籠の目に見立てて籠目文というようになりました。
江戸時代には籠目は鬼が嫌うという迷信があり、魔よけのために浴衣などに染められました。文様としては単独で用いるより、多くは動植物を添えて使われます。
【向く季節】
夏、通年
網目(あみめ)
魚や鳥をとる網の目を文様化したものです。連続するリズミカルな曲線が美しく、江戸時代になってから文様に用いられるようになりました。網目は単独で用いられるほか、魚をあしらって大漁文として浴衣などにも染められました。また、網を打って一網打尽するようにとの願いを込めて、武将の紋にも使われました。家紋には三つ網目、四つ網目などが図案化されています。
【向く季節】
夏、通年
檜垣(ひがき)
檜垣取りの中に江戸時代の小袖文様を入れ込んだ礼装用の袋帯。編み目を効果的に使った意匠です。檜(ひのき)の枝を細く薄く削って網代(あじろ)組みに編んだ垣根を檜垣といいます。その編み目の形を文様化したものは、きものや帯の柄として好まれ、白生地の地紋にも用いられています。
【向く季節】
通年
紗綾形(さやがた)
卍(まんじ)の字を斜めに崩し、組み合わせて連続模様にしたもので、「卍崩し」「卍繋ぎ」「雷文繋ぎ」などとも呼ばれます。桃山時代に中国の明から伝わった織物、紗綾の地紋に使われていたためにこの名がつけられました。
紗綾形地紋の上に、菊と蘭の文様を散らしたもの。紗綾形に、竹、梅、蘭、菊の四君子(しくんし)をあしらったものもあり、どちらも白生地の地紋として多く用いられます。※四君子とは、竹、梅、蘭、菊の4種の植物で構成された文様。古代中国では、これらの植物の美しい高貴な姿を君子にたとえて愛でられてきた。かつては女性の慶事礼装用の半衿は紗綾形地紋と決まっていました。現在はきものや長襦袢の地紋に多く用いられています。
【向く季節】
通年
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。