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きものの文様【紅葉(もみじ)】紅葉を観賞するようになったのは平安時代頃から、とご存じでしたか?

2020.07.03

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きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。記事一覧はこちら

今日の文様33
紅葉(もみじ)


楓の葉は紅葉するとより美しくなるので、古くから文様として使われてきました。楓と紅葉は同じ植物で、楓の葉が色づいたものが「もみじ」です。

紅葉を観賞するようになったのは平安時代頃からで、それ以前の奈良時代には黄葉(おうば)に映える美しい山並みを眺めていたようです。それが色づく楓の葉を愛でるようになったのは、紅葉を見て夏に疲れた体に生気を取り込もうとする、中国の思想が伝わったからとの説があります。それが紅葉狩りで、山中で宴に興じて体力の回復を願い、秋の収穫を祝いました。


紅葉文(もみじもん)は、単独で使われるほか、唐草(唐草の文様の記事はこちら)や波、流水、鹿(鹿の文様の記事はこちら)と組み合わせたものもあります。

紅葉格子(もみじごうし)




紅葉の枝を格子状に意匠化したもので、同じような表現方法は梅などにも見られ、そちらは梅格子(うめごうし)といいます(梅の文様の記事はこちら)。写真の織り帯は、紅葉の葉の色にアクセントをつけて変化を持たせています。

流水に紅葉(りゅうすいにもみじ)




色づいた紅葉の落ち葉が、渓流を流れていく様子を文様化したもので、紅葉の文様の中ではもっともポピュラーなものといえます。季節感とともに秋の風情が感じられ、現代のきものや帯にもよく使われます。

光琳紅葉(こうりんもみじ)




江戸中期の画家・尾形光琳(おがたこうりん)の一字をとって、光琳派美術の一系譜を「琳派(りんぱ)」と呼びます。その作風にはさまざまな特徴がありますが、文様としては簡略化しながらも、優しい曲線で描かれたものが主流です。

そうした琳派風のタッチで、紅葉を表現したものを光琳紅葉文といいます。ほかに、光琳梅、光琳菊、光琳松などが有名です。

龍田川(たつたがわ)



秋の結婚式に
龍田川文様の華やかな訪問着。日本の秋を感じさせる装いは、紅葉が色づき始める頃に。


流水に紅葉を散らした文様は、またの名を龍田川ともいいます。自然が豊かな日本は紅葉の名所が多く、奈良県の生駒(いこま)産地を流れる龍田川もそのひとつです。紅葉と川の風情がことのほか美しく、古くからその風情が愛でられてきました。

文様とされたのは、『古今集』の「龍田河紅葉乱れてながるめりわたらば錦(にしき)中やたえなむ」に由来します。流水と紅葉の取り合わせは現在でも根強い人気があり、きものや帯に多数用いられています。

【向く季節】
秋、通年


「#きものの文様」記事一覧はこちら

きものの文様

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。
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