〔今月の引き出し〕
母の地味な紬+娘時代の派手帯を今の気分で
麗らかな春。散り始めた八重桜や大輪の牡丹に続いて、クリスマスローズやポピー、カタクリの花など……庭の花々も次々に花開き、枝垂れ梅にも実がつき始めました。愛犬のリンゴとタンゴも温かな日差しに包まれテラスで日向ぼっこ。
この季節になると柔らかな陽気に誘われて、ほっこりとした母の紬を纏ってお出かけも心躍ります。今月は母の「地味だなぁ」と思っていた紬に、私らしく娘時代の帯を合わせたスタイルをご紹介いたします。
道ゆく人の目を楽しませているわが家の自慢の牡丹。リンゴもご近所の方にご挨拶を。日向ぼっこするリンゴ(右)とタンゴ(左)。庭の花たちに心癒されます。 地味紬には鮮やかなコントラストが鍵
「織りのきものに染めの帯、染めのきものに織りの帯」というきものの一大セオリーを、母はまだ少女の私に話聞かせていました。「どうしてなの?」と尋ねると、「そうするとお洒落ってことよ」と答える母。今になって思い返すと、なんともアバウトなアンサー(笑)。少し大人になって、このセオリーが理解できてくると、もうこの「お洒落」の虜に。そして、そのお手本はいつも母でした。
タンスで眠っている母の紬と染め帯はとても素敵ですが、そのまま合わせると今の私にはいかにも地味に見えてしまいます。そこで、シックな地色の紬にこそ、「帯に派手なし」という方程式を当てはめてみることに。見ているだけでウキウキと気持ちが高揚するような、娘時代に大好きだった染め帯を合わせてみました。
母の上代紬に牡丹や藤がリズミカルに舞う染めの袋帯を合わせて。しゃっきりとした斜め格子に、丸紋を組み合わせた意匠の面白さもお気に入りのポイント。帯の色に合わせてバッグも赤でコーディネート。
流水の泥大島には、遠山の中に春秋の花や鳥や蝶を染めた全通柄の袋帯を。白の帯締めで引き算をしながらも、房で赤を効かせるのが私らしさのポイントです。
白大島には「いろはにほへと」の紅型の名古屋帯を。マルチカラーの帯締めは多色づかいの帯と相性抜群の一本です。