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【スーパー獣医 野村潤一郎先生の動物エッセイ】昆虫飼育のススメ

2021.04.27

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スーパー獣医の動物エッセイ「アニマルQ」 自ら多くの動物を飼育する野村先生は、実は昆虫の飼育においてもエキスパート。虫は苦手という人は少なくありませんが、そもそも日本は江戸時代からの昆虫飼育の先進国という野村先生。大人の昆虫飼育の楽しみ方を指南します。もちろんそこは一癖も二癖もある野村流で。一覧はこちら>>

第7回 昆虫飼育のススメ


イラスト/コバヤシヨシノリ

文/野村潤一郎〈野村獣医科Vセンター院長〉

『堤中納言物語』は平安時代に書かれた作者不詳の短編物語集である。その一編に「虫めづる姫君」という話がある。主人公の姫様は髪を結わず眉毛も抜かずお歯黒もせず、当時としては自由気ままな服装を貫き、興味があるのはもっぱら虫という変人として描かれている。


作者の意図が自由奔放さの否定なのか本質重視のすすめなのかは定かでないが、少なくとも虫を飼う行為そのものについては奇特であるという前提で話は進む。

しかし江戸時代になるとこの認識はがらりと変わり、虫は愛玩の対象とされ多くの人々がその飼育を楽しんだ。街には虫売りの行商が来て、生体のみならず飼育用品まで販売した。虫カゴは竹ひごを組んだ質素なものから豪華な蒔絵が施されたものまであったという。

昆虫飼育の文化はおそらく日本がフロンティアであり、諸外国では現代においても理解されていない感がある。カゴの中のキリギリスの鳴き声に風流さを感じるのは日本人特有の感覚なのだろう。

さて、昔も今も鳴く虫で一番の人気はやはりスズムシである。

夏の夕暮れに聴くその涼し気な音色は情緒がある。飼育容器は大きめの素焼きの甕が伝統的だ。底に敷く砂は虫が傷つかないように角がない細かい川砂を選ぶ。これをフライパンで焼いて雑菌を殺してから使うのだが、炭のかけらをいくつか立てておけばダニの発生も抑えることができる。

エサは野菜くずでよいが、楊子を刺して床材に立てると虫は喜ぶ。小皿にカツオブシを少量入れておけば共食いも防げる。時々霧吹きをして湿度を保つ。甕の口には紗をかぶせて麻紐で結び脱走を防ぐ。このように飼えば卵を産み、毎年虫の音を楽しむことができる。大人の趣味っぽくて実にシブいと思う。

昆虫の王様といえば誰もがカブトムシを思い浮かべる。

近年大きくて派手な形態の外国種が輸入され、昆虫好きはこぞって求めたが、近頃は日本産の野武士のような風貌こそが一周回って最高に格好良いと再認識されている。この昆虫界のサムライは実際に外国産と戦わせてみるとなかなかの健闘ぶりで、“一寸の虫にも五分の大和魂”があるのではと思ってしまう。

飼い方は非常に簡単で大きめのケースに腐葉土を入れ、クヌギのほだ木を数本入れておけばよい。エサは昆虫ゼリーで十分だが、繁殖させるならスタミナをつけるために栄養価の高い高価なものを使うべきだ。ひとつのケースにオスとメスを1匹ずつ入れるのが基本だが、彼らは大変に本能的で朝から晩までエサを貪り、そうでなければ交尾に勤しむ。

やがてオスは死ぬが、メスは一人になっても床材に沢山の卵を産み続ける。夏が終わって親たちがいなくなっても、床材には子が育っているのでベビーたちのエサとなる腐葉土を増量し、翌年の夏を待つとよい。なお、虫一般に言えることだが、彼らは意外と暑さと蒸れに弱いため、温度と湿度は適宜管理しなければならない。
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