『西郷どん』、その後の二人〈前編〉林 真理子さんが “時代の顔” を迎えて対談する新春企画も3回目。「今回は鈴木亮平さんしかいないでしょう!」林さんの熱いリクエストに、鈴木さんも快く応えてくれました。NHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』で、原作者と主演としてタッグを組んだお二人。鈴木さんの八面六臂の活躍を、林さんは頼もしく見守ってきました。『西郷どん』が結んだ絆は深く。久しぶりの再会です。
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開口一番「相変わらずカッコいいですね」と林さん。ストレートな言葉に、鈴木さん、照れ笑いで応えつつ、3年ぶりのツーショット。林 真理子さん(はやし・まりこ)1954年山梨県生まれ。86年直木賞受賞。小説、エッセイなど著書多数。直木賞をはじめ各文学賞の選考委員を務め、2020年には日本文藝家協会の理事長に就任。21年に発表した『小説8050』(新潮社)も評判に。近著は皇族の結婚を題材にした『李王家の縁談』(文藝春秋)。鈴木 亮平さん(すずき・りょうへい)1983年兵庫県生まれ。東京外国語大学卒業。2006年に俳優デビュー。14年、NHK連続テレビ小説『花子とアン』で注目を集め、以降数々の映画やドラマで活躍。18年、初の大河ドラマ出演で『西郷どん』の主役を務める。21年には2本のドラマ、3本の映画で多彩な顔を見せた。大河の主役を担った経験がいいプレッシャーに
林さん(以下、林) 『西郷どん』が放映された2018年の秋に紫綬褒章を受章させていただいて、そのお祝いに駆けつけてくださいました。それ以来かしら?
鈴木さん(以下、鈴木) お久しぶりです。
林 前にお目にかかったときとは、やっぱり違いますね。スターの貫禄というかオーラがすごい! 以前はまだ若々しい印象でしたが、3年でこんなに変わられるなんて、びっくりです。
鈴木 ありがとうございます。
林 私も大河ドラマにかかわらせていただいて、チーム一丸となって成し遂げたという気持ちがあるので、ご活躍はずっと見守ってきました。母のように(笑)。だから、とてもうれしい。
鈴木 大河をやった俳優として厳しい目で見られることは当然ですし、それに恥じない背中を見せていかないと。いいプレッシャーを感じています。
「大河の俳優として恥じない背中を見せていかないと」(鈴木さん)
徹底した役づくりに定評がある鈴木さん。爽やかな好青年から震えるほど怖い悪役まで、作品を見るたびにまったく違う印象になる。林 大河チームでグループLINEをつくっていて、ときどき連絡をとり合うんですよね。先日も、西田(敏行)さんが「君の活躍すごいよ」と褒めていらっしゃった。最近だと『TOKYO MER~走る緊急救命室~』ですか。お茶の間をぐっと引きつけて視聴率もよかったですよね。
鈴木 ホッとしました。
林 私、同じ日曜劇場の『テセウスの船』も大好きでした。大河の後、順調にお仕事されているなと感じた作品でしたし、あの明るいお父さんの笑顔を見たとき、ああ、これが鈴木さん本来の個性なんじゃないかなと思いました。
鈴木 『TOKYO MER』は『テセウスの船』と同じ制作チームなんですよ。コロナ禍での医療ものだったので、ルールを破るようなことをしたら、それこそ医療従事者のかたに申し訳ない。私生活も含めて、ものすごく気を引き締めての撮影でした。
林 なるほどね。そうそう、緊急のお医者さんって感情を殺した声ですよね。あれは、独特のいい方ですか?
鈴木 そうです。実際、いろいろ見学をしたり、ドキュメンタリーを見たりしたんですが、できる人ほど感情は出さない。たとえ死が迫っている人に対しても動揺は一切見せずに声をかける。特に僕が演じた喜多見という医師は、悲惨な場面をたくさん見てきた人だから、どんな状況におかれても冷静に務めなければいけない役でした。
林 映画の公開は、2021年だけで何本でした?
鈴木 映画は3本でした。『孤狼の血LEVEL2』、『燃えよ剣』、それから『土竜の唄 FINAL』です。
林 すみません!『孤狼の血 LEVEL2』は怖いんでしょ? みんなから「鈴木さんのイメージが変わるくらい怖いよ」といわれて。私、怖いのダメなんです。
鈴木 グループLINEでも、そうおっしゃっていた(笑)。
林 DVDになったら、怖いシーンだけ飛ばしながら絶対見ますから。