“年男年女”の正月きもの 最終回(全5回) 2023年の幕開けにふさわしい晴れ着姿でご登場いただいたのは、卯年生まれの皆さん。スポーツなど体を動かすことが得意なのも共通点で、健康的な笑顔と軸がビシッと決まった立ち姿が絵になります。
前回の記事はこちら>> 松重 豊さん【1963年生まれ】
還暦で一回リセットします
松重 豊(まつしげ・ゆたか)1963年福岡県出身。演劇集団GEKI-SYA NINAGAWA STUDIOを経て、映画、ドラマ、舞台にと幅広く活躍中。2012年に『孤独のグルメ』でドラマ初主演。2023年の大河ドラマ『どうする家康』では家康の家臣、石川数正を演じる。重厚感のある風通(ふうつう)御召のきものに無地のグレー地御召の羽織、仙台平の袴を合わせました。還暦を迎える松重さんのために、赤を効かせた角帯と羽織紐を選んだのがポイントです。
きもの、羽織、帯、小物一式/銀座もとじ 男のきもの 袴/金閣寺サロン 扇子/井澤屋 眼鏡/武田メガネ天神本店固定観念もしがらみも振り払って“空っぽ”でいるのが一番です
「きもの姿で雑誌のお正月号に載るなんて初めてです」といいながら、188センチの長身でひらりと一回転してくださった松重 豊さん。
撮影中の大河ドラマ『どうする家康』について伺うと、「古沢(こさわ)良太さんの脚本が面白い。群像劇としての笑い、独特のセンスが随所にちりばめられています。つまらなかったら僕らの責任です」と熱い言葉が返ってきました。
名脇役として知られる一方、近年は執筆活動も。
「何十年も人の書いたセリフをしゃべってきたでしょう? もちろん名ゼリフを話す幸せもありますが、どうしても頭が受け付けないものもあります。その点、自分の言葉で好きに書くというのは本当に自由でストレスフリーです」。
嬉しそうに話す松重さんの現在のキーワードは「空っぽ」と「リセット」。
「固定観念やしがらみにがんじがらめになって、人の話を聞けなくなってしまうのが、僕ら世代の残念なところだと思うんですね。だから、そういうものを振り払って空っぽになる。この人空っぽなんだなと思ったら、若い人だって水を入れてくれるかもしれない。仕事については還暦を機に一回リセットします。今のままでいいのか自問し、新しいことも試してみるつもり。種は蒔いたので、それが実を結ぶか枯れてしまうか?というのが、僕の還暦の楽しみですね」。
穏やかに語りつつ、丸眼鏡の奥の瞳は静かに燃えているように見えました。
卯年生まれの今をときめく5人が競演
“年男年女”の正月きもの
撮影/鍋島徳恭 きものコーディネート/相澤慶子 ヘア&メイク/林 裕子 着付け/小田桐はるみ 取材・文/清水千佳子
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。