2023年 “時代の顔”新春特別対談
初対面にもかかわらず、すぐに打ち解けて話が弾んだお二人。撮影の際には山田さんがきもの姿の林さんの背に手を当ててエスコートする場面も。林 真理子さん(はやし・まりこ)1954年、山梨県生まれ。1986年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞、1995年『白蓮れんれん』で第8回柴田錬三郎賞、1998年『みんなの秘密』で第32回吉川英治文学賞受賞。2018年紫綬褒章受章。2020年第68回菊池寛賞受賞。2022年母校である日本大学の理事長に就任。山田裕貴さん(やまだ・ゆうき)1990年、愛知県生まれ。2011年テレビドラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー。2022年エランドール賞新人賞を受賞。主演映画『夜、鳥たちが啼く』が2022年12月9日公開。2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』に本田忠勝役で出演。フジテレビ月9ドラマ『女神(テミス)の教室~リーガル青春白書~』に出演予定。演じる役柄を掘り下げて、台詞のいい回しを工夫
林さん(以下、林) 山田さん、銀髪なのですね! NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』では、ちょっとさえない真面目な先生役でいらしたので、今日の格好いいスーツ姿とのギャップに驚きました。
山田さん(以下、山田) 今、撮影をしている大河ドラマも月9も、撮影では鬘をつけているので、プライベートではちょっと髪の色で遊んでいます。
林 朝ドラで演じていらした博夫さんは、いかにも教師そのもの、という雰囲気でしたね。
山田 ありがとうございます。ドラマの中で年をとっていく感じを出しながら、喋り方や声のトーン、テンポなど先生っぽい口調を工夫していました。誰かにいわれたわけではなく自分で試しながら演じていたので、気づいていただけて嬉しいです。
林 以前の朝ドラ『なつぞら』の時は素朴な和菓子屋の男の子でしたね。そもそもNHKの朝ドラは都会的な男の子はなかなか出てきませんものね。
山田 自分の中にある素朴さやダサさが出せていたらいいのですが。
林 ダサいなんてとんでもない! こんなに素敵だと地元の名古屋でも目立っていたでしょう? 芸能界に入ったきっかけはスカウトですか?
山田 全然目立ちませんよ。芸能界にも自分で芝居の勉強がしたくて上京して、舞台のセットを作ったりチケットのもぎりのアルバイトをしながら養成所に通っていました。
「演じる役で印象ががらりと変わる山田さんの今後が楽しみ」(林さん)
役によってガラリと印象を変える山田さん。その役づくりや俳優としてのスタンスを熱く語る姿に「お若いのに筋が通っていますね!」と感嘆する林さん。林 役者を志望したのは何かきっかけがあったのですか?
山田 もともと父が芸能の世界ではないですがテレビに映ることもある仕事をしていまして。その姿が格好いいなと思っていたんです。
林 お父さまは中日ドラゴンズや広島東洋カープで活躍された山田和利選手ですね。山田さんご自身も野球をされていたのでしょう?
山田 毎年全国大会に出場するようなクラブチームで、練習はなかなか厳しかったです。
林 俳優さんは早朝や寒い雪の中での撮影もあると聞きますが、部活やクラブでの経験を思えばどんな現場でも耐えられますね。
山田 確かに撮影条件がきつくても嫌だと思ったことはないですね。
林 高校を卒業して俳優を目指して、その頃の志望は舞台? 映像?
山田 僕は最初から映像志望でした。高校の時に俳優の奥田瑛二さんの出身校ということで、奥田さんが監督をされた映画『長い散歩』を見る機会があったんです。それで映像の世界って素敵だな、と思って。
林 それは奥田さんが聞いたら喜びますね。ところで先日、故郷の山梨で「信玄公祭り」がありまして、家臣になった友人に聞いたところ、武田信玄公に扮したかたが乗っている馬は、大河ドラマにも登場していると聞きました。朝は大河ドラマ、昼は武者行列と売れっ子のお馬さんだそうで、もしかしたら山田さんが乗ったこともあるのかしら、と思いました。
山田 大河ドラマの乗馬指導をしていただいている乗馬クラブが山梨にあるので、本当に僕が乗ったことがある馬だったかもしれません。