是枝裕和監督、西川美和監督のもとで監督助手を務めてきた広瀬奈々子監督。2019年、映画『夜明け』で監督デビューを果たした。例えば、書店で。ふと目に留まって手に取った新刊本。その行動には、必ず理由があるはずです。あなたが何に惹かれたのか。その謎がきっと解き明かせる、ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』が完成。柳楽優弥さん主演の映画『夜明け』を手がけた広瀬奈々子監督が、日本を代表する装幀家・菊地信義さんにカメラを向けました。菊地さんの創造の過程に迫った広瀬監督に、本作について伺いました。
——デビュー作はフィクションでした。ドキュメンタリーを撮ることになったきっかけを教えてください。
「デビュー作の『夜明け』を撮る前からこの企画は考えていて。是枝監督のもとで3年間修業をし、これから自分で作品を作っていかなきゃいけないというときに、是枝さんから最初にドキュメンタリーを作ってみたらいいんじゃないかと言われたんです。是枝さんもドキュメンタリーを作っていたので、実体験も含めてのアドバイスだったと思うんですけど。それでドキュメンタリーを作ってみようと思ったときに、最初に浮かんだのが“装幀という仕事を知りたい”だったんです。
私の父が装幀家なんですけれども、装幀って果たしてどういう仕事だったんだろうということを改めて考えてみたくなって。そんなときに菊地さんの著書『装幀談義』を読んで初めて、装幀ってこういう仕事なんだということを知ったんです。しかも、菊地さんは、あくまで主語が本にあって、テキストが主体で、中身を引き出して外側を作っていくという、非常に職人的な思想を持っていらっしゃって。それにすごく惹かれて、菊地さんという人に会ってみたい、その思想を探りたい、と思ったんです」