※『ケンジトシ』は、2020年6月~7月に東京と大阪で上演される予定でしたが、新型コロナウイルス感染防止の観点から、残念ながら上演延期(時期調整中)となりました。詳細はシス・カンパニーの公式サイトまで。
「台本を読んで人物像を考えたりするんですが、結局は現場でやってみないとわからない。台詞を声に出して、相手の声を聞いて演じているうちに、だんだん見えてくる感じです」
役作りについて、そう話す中村倫也さん。どんな役にも変化する抜群の演技力で、いまや引っ張りだこの人気俳優だ。
2018年のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』への出演を機に注目を集めたが、舞台では20代の頃から高い評価を得ていた実力派。
そんな彼が、劇作家の北村 想さんが宮沢賢治とその妹トシの絆を題材に書き下ろした舞台『ケンジトシ』に出演する。
賢治とトシ、賢治と詩、賢治と死......いかようにも取れるタイトルだ。
「その全部が含まれていると思います」と中村さん。
「実は最初に準備稿を読んだとき、これがどんな舞台になるのか、まったく画えが浮かばなくて。賢治に関する僕の知識が足りなかったせいもあるんですが、つくりも変わっていて、それでやりたいと思ったんです」。
「漠然としたシンパシーを賢治に感じています」── 中村倫也
衣装協力/NAMACHECO/MATT.中村さんが演じるのは、ケンジ( 宮沢賢治)。若くして病に倒れる、その最大の理解者であった妹トシを、昨年の連続ドラマ『凪のお暇』でも共演した黒木 華さんが演じる。
「華ちゃんも“(準備稿を)読みました。中村さん、どうしましょう?”といっていましたね(笑)。僕の場合は“どうしましょう?”が楽しい性分。予想がつかないもののほうがワクワクします。映像の仕事では、自分が過去にやったものに近い役や作品のお話をいただくことも多くなってきたので、その分、攻めていきたいと思っている舞台で、こういう作品に声をかけてもらえて嬉しいです」
攻めの作品選びをした以上は、入念な準備が必要。中村さんは賢治の資料を集め、その故郷・岩手の花巻にも足を運んだという。
「今感じているのは、(賢治への)漠然としたシンパシーと、極小のものを見ながら、極大のものを見ているような人だなということ。自分が生まれたのは裕福な家で、でも家業の質店と古着店が相手にしているのは、自然を相手に必死で働いている貧しい農民たち。きっと、そういう両端をたくさん見ながら、その間で葛藤していたのかなと。栗山民也さんの演出を受けるのも初めてですし、これから稽古をしていく中で作品がどんなふうに立ち上がっていくのか、本当に楽しみです」