河瀨直美監督との出会いは12年ほど前ながら、河瀨組へは本作が初参加となる井浦 新さん。特別養子縁組で息子を迎える父を演じた。クランクイン前に重ねた時間と経験が役にじかで生きてきた
家族とは? そう問われたら、皆さんはどう答えますか? 「血で親子、家族が決まるんじゃなくて、そこにかけてきた、一緒に過ごしてきた時間や経験が積み重なってできていくんだなと感じました」と言うのは、井浦 新さん。辻村深月さんによるヒューマンミステリー小説を河瀨直美監督が映画化した『朝が来る』で、実の子を諦めて特別養子縁組で男の子を迎え入れる栗原清和・佐都子夫妻を永作博美さんと演じました。
河瀨監督は、キャストとの面談の際に必ず“役を積む”という話をするといいます。“役作り”ではなく“役積み”とは、登場人物が経験してきたこと、経験するであろうことを役者たちがリアルに体験し、その人物になっていくこと。井浦さんも永作さんと共に、クランクイン前から不妊治療の問診を受けたり、特別養子縁組で養子を迎えた親子に会って話を聞いたり。
「(劇中に出てくる)ベビーバトンのような活動(養子と養親のマッチング)をされている方と、永作さんと夫婦として実際に面接を受けさせてもらったりとか、僕が無精子症の役でもあったので、子供を授かることができない方と男と男で話してみる時間もいただいたりして。その時間と経験は、じかに生きてくるというか。自分がこれから清和という役を演じていく上で、無精子症だと聞かされた局面で一体自分はどう感じるのかっていうことだったりとか、そこに向かっていく気持ちというものを作ることができたなと思っています」