『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞した桜木紫乃さん。著書の映画化は『起終点駅 ターミナル』に続き2作目となる。累計発行部数100万部を超える直木賞受賞作『ホテルローヤル』が、話題のネット配信ドラマ『全裸監督』の総監督を務めた武 正晴監督により映画化されることに。映画『ホテルローヤル』のこと、原作となった7編からなる連作短編小説のこと……。著者・桜木紫乃さんに伺いました。
——ホテルローヤルは釧路に実在したラブホテルで、桜木さんのご実家なんですね。「そうなんです。同じ名前のホテルで、私がそこの娘だったことと掃除の経験と父がパチンカーだったのは事実（笑）。でも、自伝ではなくて。たしかに、えっち屋（アダルトグッズ製造販売業者）さんも出入りの業者さんもいたし、パートさんもお客さんもたくさん見てきましたけど、自分が育ってきた環境を感傷的にならずに小説として虚構で全部書くことで、もうちょっと小説を書かせてもらえるかなと思ったんです」
——実家を舞台にするきっかけが何かあったんですか？「1編目の『シャッターチャンス』を書いたのは、『小説すばる』の官能特集がきっかけで。新人はそういうところで腕試しさせられるんです（笑）。“書けたら載せてあげますよ”くらいな感じで。それで、お題として廃墟でヌード撮影なんかどうですか？って言われたんですね。私が自信を持って書ける廃墟はラブホテル。もうホテルローヤルしか考えられなかったですね。そうしたら、ラストから遡る話という提案があって、いろいろな視点を使って廃墟になったホテルから開店までを書きました。だから、きっかけは“廃墟でヌード”ですね」
