これからの時代を生きる
戦後、75年を迎えた2020年、世界は新型コロナという目に見えないウイルスの脅威にさらされ、わが国も混迷の只中にいます。この、かつてない不安の時代をいかにして乗り切り、希望を灯して生きていくべきなのか。
新年にあたり、数々の執筆、世のために発言を続けられ、米寿を越えてなお精力的に活躍なさっている作家、曽野綾子さんと五木寛之さんに、その心構え、前を向くヒントを語り合っていただきました。
戦前、戦後を生き抜かれてきた逞しさと、含蓄のある言葉は、私たちに深い示唆と勇気を与えてくれます。
曽野綾子(作家)+ 五木寛之(作家)
曽野綾子1931年、東京都生まれ。作家。聖心女子大学卒業。79年ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章、72年から2012年まで「海外邦人宣教者活動援助後援会」代表を務めた。2003年に文化功労者。五木寛之1932年生まれ。作家。早稲田大学露文科中退。『さらばモスクワ愚連隊』でデビュー。66年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞受賞。『大河の一滴』などベストセラー多数。近著に『親鸞』など、仏教に関心を寄せた著作が多い。五木 僕がまだ20代だった頃、曽野さんが、芥川賞候補となった『遠来の客たち』という小説を発表して、颯爽(さっそう)と登場された。僕らの間では、曽野さん、瀬戸内晴美(寂聴)さん、有吉佐和子さんを文壇の三人娘と呼んでいたんですよ。3人とも時代を闊歩していらした(笑)。
曽野 嘘がいっぱいつけた時代だったのですよ(笑)。まだ何も持たない、何者でもなかった頃。
五木 今も雰囲気は、全然お変りになってないですね。
曽野 だいぶ年をとりましたけどね。
五木 令和も3年目を迎えますが、曽野さんのお家では正月はどのように過ごされているんですか。
曽野 子どもの頃は、父が中小企業の経営者でしたから、何十人とお客様がみえて、のんべえは座っていればよいけれど、母や女の子である私は3日間、茶碗や皿ばかり洗わされていて、大変だったという思い出がありますね。
五木 ああ、うちの母もそれを嫌がっていました。
曽根 作家になられてからはどうですか。昔から有名な作家のお宅には、たくさんの編集者の方が来られて、賑やかに飲まれるでしょう?
五木 僕はそれをやらないんです。静かなものです。
曽野 あら同じですね。三浦朱門と結婚してから5年ほど、正月には毎年、箱根に旅行に行っていましたら、いつのまにか“あの家は正月はいない”ことになっておりました(笑)。