なにげない日常に、ある日やってきた猫が人生を変えた―。猫と暮らす、あるいは暮らした5人の愛猫家の皆さまに傍らに猫のいる心豊かな日々を語っていただきました。
第4回目は、魚類学者・さかなクンと愛猫のミミのお話です。(前回の
猫のいる愛しき人生! 第3回(落語家・林家たい平さん)はこちらから。)
動物好きの一家で育ったさかなクン。初めて猫を飼ったのは小学2年生のときです。家の前で行き倒れになりかけていた巨大な白いペルシャ猫を救護し、ニャン太と名づけて夜も一緒に眠るほどの仲よしになりました。
大人になり、思いがけない形で猫との暮らしが再び始まります。観賞魚を扱う店で店長をしていたとき、一人では寂しいだろうとお客さんから子猫をもらったのです。それがミミ。エジプシャンマウという美しい品種の猫でした。
「知的で気品があるんです。でも構われるのが嫌いで、抱っこするとシャーッと怒るんです」。
ミミ(エジプシャンマウ)
アルバイトをしていた観賞魚を扱うお店では魚と共存。魚には決して手を出さず、店内でも泰然としていた。ところが猫と魚の同居はすこぶる円満でした。ミミは魚を眺めたり、水槽のそばに寄り添ったりして、まるで魚たちを見守っているようでさえあったといいます。
その後、ミミと一緒に千葉県館山市の実家に移ります。自然豊かな館山でミミは野遊びをし、浜歩きをし、家族の愛情に包まれて4年前、17年の生涯を終えました。
凜として生きたミミをずっと覚えていたいと、さかなクンは彼女の眠る姿を絵にしました。周りには在りし日のミミの折々の姿が生き生きと、走馬灯のように描かれています。
ミミもそうでしたが、猫は気の向くまま、いつもマイペース。そんな性格に似ている魚もいて、さかなクンの好きなフグの仲間のイシガキフグも「怒ったり、かと思うと人なつっこく寄ってきたり。猫のツンデレそっくりでギョざいます」。
漁網にかかったイシガキフグを漁師さんから譲り受けて全国各地の水族館に寄贈し、今では10か所の水族館で猫似のイシガキフグが泳いでいます。
さかなクン
東京都生まれ。テレビや講演など幅広く活躍。2011年より農林水産省の「お魚大使」。20015年に東京海洋大学より名誉博士号授与。
撮影/本誌・西山 航(人物) 取材・文/松田純子
「家庭画報」2018年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。