withコロナ時代の健康術 第4回(03) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「胃の健康」をテーマに河合 隆先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> ピロリ菌の有無で変わる“胃の検診・受診”
〔解説してくださるかた〕
東京医科大学 主任教授 同病院内視鏡センター 部長 健診予防医学センター 部長
河合 隆(かわい・たかし)先生
●前回の記事
“胃の機能やピロリ菌”を知ることが胃の健康の第一歩>>年齢や病気のリスクに応じた胃のチェック方法を知る
ピロリ菌に関する血液検査と胃内視鏡検査がおすすめ
胃がん検診は、問診に加え、胃X線検査(胃透視検査、バリウム検査)または胃内視鏡検査のいずれかを50歳以上が2年に1回実施と定められています(胃X線検査は、当面の間、40歳以上が1年に1回実施)。
前述のようにピロリ菌の有無で胃がんのリスクは異なります。河合先生は40代以下の若い世代も含めて、一度はピロリ菌がいるかどうかを血液検査と胃内視鏡検査で調べることをすすめます。
「胃X線検査はおおよその状況はつかめますが、粘膜にバリウムを貼りつかせて表面の凹凸をみるため、平らながんは見つかりにくいのです。また、色をみることができません。それに、もし胃X線検査で異常が見つかると後で内視鏡検査を受けることになります」。
胃内視鏡検査には内視鏡を口から入れるタイプと鼻から入れるタイプがあります。経鼻内視鏡は嘔吐反射を起こしにくく、経口内視鏡よりも苦痛が少ないとされています。内視鏡がどうしても怖い人は、麻酔をかけて眠ったままで受けることもできます。
ただし、血圧や酸素飽和濃度が下がったり、物忘れが起こったりすることがあるため、「できれば麻酔を使わずに受けていただきたいですね」。
血液検査はABC分類検査、胃がんリスク層別化検査などと呼ばれ、ピロリ菌に対する抗体と消化酵素ペプシンの前駆物質であるペプシノーゲンの量を調べたうえで胃がんリスクを判定します。
ペプシノーゲンの値の低さは胃粘膜が萎縮してペプシノーゲンの産生量が落ちていることを示します。この検査は人間ドックなどのオプションとして受けることができます。
なお、ピロリ菌の除菌を終えても萎縮性胃炎は残っています。「長年の炎症によって粘膜表面が瘢痕のようになっています。そこから胃がんができることがあるので、定期的に内視鏡検査を受け続けることが必要です」。
ゲップとしゃっくりは心配しなくて大丈夫!?
ゲップは、飲食物や唾液とともに飲み込んで胃の上部(胃底部)にたまった空気が漏れ出してくる現象です。
消化された食べ物が胃から十二指腸に入るのを合図に十二指腸から胃酸を中和させるセクレチンというホルモンが分泌されます。このセクレチンが噴門を緩ませるため、食後にはゲップが出やすくなります。
また、前かがみになる、体をひねるなどで胃の形が変わった際にも出ることがあります。河合先生によると頻繁なゲップが病気と関連することはほとんどないそうです。
一方、しゃっくりは胃などへの刺激によって横隔膜や声門などの筋肉がけいれんすることで起こります。通常は数分で自然に止まりますが、「しゃっくりが長く続く場合、あるいは何度も出る場合には要注意」と河合先生。
「食道がんが広がることによって横隔膜が刺激されているケースがあります。しゃっくりがよく出るかたは食道や胃の診察を受けてください」
〔解説してくださったかた〕河合 隆(かわい・たかし)先生東京医科大学 主任教授 同病院内視鏡センター 部長 健診予防医学センター 部長。1984年東京医科大学卒業。88年同大学大学院修了。医学博士。2003年の内視鏡センター創設以来、部長を務める。05年同大学助教授、16年から主任教授。専門は上部・下部消化管疾患、ヘリコバクター・ピロリ、食道がん・胃がん。20年の第100回日本消化器内視鏡学会総会会長など要職を歴任。 取材・文/小島あゆみ イラスト/にれいさちこ
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。