withコロナ時代の健康術 第6回(03) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「手と指の痛み」をテーマに平田 仁先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕
名古屋大学 大学院医学系研究科 教授、同大学 予防早期医療創成センター 教授
平田 仁(ひらた・ひとし)先生
●前回の記事
細かい動きを実現する“手・指の関節や腱”>>手や指とともに首や肩のストレッチを
前回の記事でご紹介したように手や指の痛みやしびれは全身の健康とも関係しています。特に前腕、肩、首、背中、腰は手を動かすときに連動して動くので、これらの部位がうまく動かないと手や指にも負荷がかかることになります。
「女性は加齢によって骨盤が後ろに傾きがちになり、猫背になりやすくなります。それによって背中や肩に負担がかかり、手や指にも影響します」(平田先生)。
柔軟性や筋力を高める運動を
そのため、骨盤や体幹を強くする筋力トレーニング、ウォーキングなどで全身の筋力や持久力を保ってよい姿勢を保つことや、肩や腕、背中、腰のような重要な関節の柔軟性を高めておくことが手や指の痛みやしびれの防止につながります。
普段から下のイラストのような首や肩のストレッチをしておくのがおすすめです。
手や指についている小さな、しかし重要な筋肉や腱・腱鞘をしなやかに保つためには、
次ページのような運動が有効です。
毎日、手や指がこわばりやすい朝をはじめ、テレビを見ながら、お風呂に浸かりながらなどちょっとした時間にやってみましょう。手を温めてから行うと安全です。
首や肩のストレッチで手や指の痛みを予防
●首から背中の柔軟性を高める肩甲骨を動かすことで肩と背中を柔軟にし、手や指の痛みを予防。
(1)椅子に浅く腰かける。みぞおちの高さあたりになるように枕やクッションを置き、その上に手を載せる。胸の骨を前に出すイメージで胸を張り、深く息を吸う。
(2)息を吐きながら3秒間背中を丸める。3秒間かけて戻り、また胸を張る。10回行う。
●肩の緊張をほぐす胸と背中の筋肉を緩め、肩を楽にすることで、作業時の手や指への負担を減らす。
(1)仰向けに寝て、両膝を軽く立てる。両手の平を上に向けて床に置く。
(2)両膝を揃えて片側に10秒かけて倒す。倒した膝は床につけず、肩や腰が浮かない程度で止める。10秒で戻る。反対側にも同様に倒して戻る。これを5回ずつ行う。
*肩や腰に痛みがなければ、手をやや広げて、さらに5回ずつ行う。運動指導/水谷仁一先生(春日井整形外科 リハビリテーション科 理学療法士)すでに痛みやしびれがある人は無理をしないで
日常の作業での手や指への負担を減らすためには、滑り止めシートやグリップの太い筆記具のような市販の道具を利用するのも方法です。
なお、腱鞘炎や関節リウマチなど、すでに関節や腱の病気と診断されている人は、無理に運動すると痛みのリスクを高めます。
一方で、手や指をかばって動かさないでいると、かえって動きが悪くなる可能性もあるため、主治医をはじめ、理学療法士や作業療法士のようなリハビリの専門家に早い段階から手・指の可動域を保つ運動などの指導を受けておくといいでしょう。
「早期から適度な運動を続けることによって痛みが和らぎ、変形を緩やかにできる例も多いのです」と平田先生は話しています。