withコロナ時代の健康術 第10回(03) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「腸の健康」をテーマに鳥居 明先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕鳥居内科クリニック 院長
鳥居 明(とりい・あきら)先生
●前回の記事
加齢とともに起こりやすい腸の症状や病気とは。受診の目安は?>>食事や運動に加え、排便の習慣づけが腸の健康を守る
腸の健康には、食事、運動、睡眠、排便習慣、生活リズムなどが関連すると考えられています。
「ただし、これらの要因について大規模に調べたデータはほとんどありません。米国で1980年代に約6万2000人の看護師を対象に、1日の運動量、食物繊維の摂取量と便秘との相関関係を調べた研究があり、運動回数や食物繊維の摂取量が多い人のほうが便秘が少なかったという報告があります」と鳥居先生。
便のかさを増やす食物繊維は食事摂取基準の目標量では18〜64歳の女性は1日18グラム以上、65歳以上の女性は17グラム以上ですが、実際の摂取量は10〜16グラムです。便を軟らかくする水分や油分とともに不足しないようにしましょう。
「運動は特別なことをしなくても、よく歩くのが一番です」。
次ページのイラストのようにおなかを刺激したり、腹筋を鍛えたりする運動も便秘の予防や解消に役立ちます。
「おなかのマッサージ(下イラスト)は米国では臨床現場で行われています。自分でやってもいいし、誰かにやってもらうのもいいですね」
仰向けに寝て両膝を軽く曲げる。腸の方向に沿って「の」の字を書くように押したりなでたりする(白い矢印)。続いて、便が通過しにくい、腸が大きく曲がっている部分(○印)を(1)から(5)の順に気持ちがよいと思うくらいの力で押す。便意を感じなくても決まった時間にトイレに行くことを習慣づけると排便のリズムがついていくといわれています。胃・結腸反射が起こりやすい朝食後などにトイレにすわってみましょう。また、便意を感じたときに我慢せずにすぐにトイレに行くことも大切です。
排便時には、下のイラストのように前傾した姿勢になると直腸と肛門の角度が開き、排便がスムーズになります。前傾しなくても足の下に踏み台を置けば同様の態勢をとることができます。
便座に背すじを伸ばして座ると直腸と肛門の角度がほぼ直角になり、肛門も締まって排便しにくい。一方、ロダンの彫刻「考える人」のように前傾してひじで体を支え、かかとを少し上げると直腸と肛門の角度が開いて排便しやすくなる。足の下に踏み台を置くのもよい。便秘などで排便しにくいとき、残便感があるときにトライを。排便時は血圧が上がりすぎないよう、おなかだけで息むように心がけよう。腸内細菌叢を整えるには、食物繊維、ヨーグルトや納豆、漬物といった発酵食品が役立つと考えられていますが、
「どのくらい何を食べればよいかは実ははっきりしておらず、また、効果の個人差も大きいと考えられているので、特定の食品を推奨することは難しいのが現状です。食物や飲料、サプリメントの効果をみるとしたら、2週間くらいは続けて、腸の調子や排便の状態をみてみましょう」
なお、下痢を繰り返すと脱水になることがあります。災害時にも役に立つので、下痢しやすい人はふだんから経口補水液を用意しておくといいでしょう。飲料だけでなく、ゼリータイプもあります。