withコロナ時代の健康術 第11回(02) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「呼吸」をテーマに本間生夫先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕昭和大学名誉教授、日本情動学会理事長、安らぎ呼吸プロジェクト理事長
本間生夫(ほんま・いくお)先生
●前回の記事
「いい呼吸」できていますか? 呼吸機能の低下 危険度をチェックする5項目>>息を吸ったり吐いたりする呼吸の働きとその仕組み
呼吸は生物が生命を維持していくうえで欠かせない活動の一つです。呼吸によって鼻や口から入った空気は喉から気管を通って肺に入ります。
肺の中には細かく枝分かれした気管支があり、その先端には肺胞という小さな袋がついています(下図参照)。
『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著・幻冬舎刊)を参考に作成肺胞のまわりを取り囲んだ血管の中を流れる血液は空気中の酸素を取り込んで全身に届け、体内ではその酸素を使ってブドウ糖などを燃焼しエネルギーに変えていきます。
また、その燃焼で発生した二酸化炭素は血液によって肺まで運ばれ、肺胞の中に出されて吐く息とともに体外に排出されていくのです。
一方、息を吸ったり吐いたりできるのは肺が膨らんだり縮んだりしているからですが、肺そのものは自力で膨らむことができません。
「この手助けをしているのが呼吸筋です。呼吸筋が収縮すると肺が膨らんで空気を取り込めるのです」と本間先生は説明します。
20種類以上の筋肉群である呼吸筋は肺が収まる胸郭を取り囲むように位置し、その中でも中心的役割を果たしているのが肋間筋と横隔膜で、胸式呼吸運動を行っているのが肋間筋、腹式呼吸運動を行っているのが横隔膜です。
『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著・幻冬舎刊)を参考に作成また、呼吸筋は「吸息筋(息を吸うときに働く筋肉)」と「吐息筋(息を吐くときに働く筋肉)」に分かれ、交互に運動しながら呼吸を行っています(上図参照)。
また、呼吸には意識して行う「随意呼吸」と無意識に行われる「代謝性呼吸」があり、これらをコントロールしているのが脳の呼吸中枢です(下図参照)。
『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著・幻冬舎刊)を参考に作成●随意呼吸意識して行う呼吸。思考、意志、判断などを司り、運動や感覚の中枢もある大脳皮質が担当。
●情動性呼吸無意識に行われる呼吸。大脳周辺系の中にある情動を司る扁桃体が担当。
●代謝性呼吸無意識に行われる呼吸。生命機能の維持・コントロールを司る脳幹が担当。
随意呼吸は大脳皮質がコントロールしていて、腹式呼吸をはじめさまざまな呼吸法がこれにあたります。
代謝性呼吸は脳幹がコントロールしており、誰もが四六時中行っている呼吸です。
これ以外に感情や不安など心の動き(情動)によって変化する呼吸があり、これは「情動性呼吸」と呼ばれ、無意識に行われる呼吸に分類されます。