香りはあなたの力になる 第3回(全9回) 目には見えず形をもたないにもかかわらず、ときに感情を揺さぶり、記憶を鮮明に呼び覚ます「香り」。今という時代にふさわしいのは心に語りかけるような、ときに癒やし、ときに力強く背中を押してくれるものです。今回、女優の安藤サクラさんと訪ねたのは3人の香りのプロフェッショナル。深く知ることで、明日をより輝かせてくれる香りと出会ってみませんか。
前回の記事はこちら>> [Part1] 女優・安藤サクラさんが香りを知る3日間
前回の記事では、香りを探求するため、最先端の研究施設「資生堂グローバルイノベーションセンター」を訪ねた安藤サクラさん。
「香りを知る3日間」の3日目は、「セルジュ・ルタンス」へ香り探しの旅へ出かけます。
【3日目】 香りの選び方を知る
訪ねた人 フレグランスコミュニケーター 町田淑江さん
(安藤さん衣装)シャツドレス22万7700円 ネックレス9万1300円/ともにジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー(ジルサンダージャパン)町田淑江(まちだ・としえ)2005年から2021年8月まで、「ザ・ギンザ」「セルジュ・ルタンス」の広報兼トレーナーを務める。ルタンス本人との対話を重ね、香りの深遠なる世界観と魅力を伝える術を構築する。安藤サクラ(あんどう・さくら)2007年女優デビュー。映画『百円の恋』、NHK連続テレビ小説『まんぷく』ほか数々の作品に出演。2018年『万引き家族』で、2度目の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。映画『ある男』が2022年全国公開予定。その人の本質までが顔を覗かせるフレグランス選び
最後に安藤さんが向かったのは、フレグランス探しの旅。哲学的にして圧倒的に美しいイマジネーションの世界を紡ぐ「セルジュ・ルタンス」。その香りのコレクションから、五感で今の自分を託せる1本を見つけます。
「フレグランスは、香りだけではなく五感すべてで選ぶもの」──町田さんナビゲーターを務める町田淑江さんは、セルジュ・ルタンス氏の言葉を借り、「肌にのせた瞬間から、その人と香りのイマジネーションの果てなき物語が始まる」と語ります。
フレグランス選びの第一歩は、まずボトルの形や色から直感的に選ぶこと。ずらりと並んだボトルの中から、安藤さんは迷いなく、10本ほどを抜き取ります。
安藤さんが最初に選んだボトル。“色の魔術師”と呼ばれるルタンスの香水は目にも美しい。次のステップで、フレグランスの名前から心に響くものを絞り込みます。ここで安藤さんの前のフレグランスは3本に。
いよいよ香りを試しますが、町田さんによれば、「最初に嗅覚を使っていないので、好きな香りではないかもしれません。でも、ここまでにたくさんの感覚が働いているので、実は決定的に選び抜かれている」のだとか。
そこで安藤さんが残したのは、日本語で「名づけえぬもの」と「夜の番人」と名づけられた2本。「『名づけえぬもの』という言葉には、女優だけれど女優という名前のものになりたかったわけではない自分に通じるものを感じます」。
安藤さんが手にしているのは、最後に選んだ2本のうちの一つ、「夜の番人」の和名をもつフレグランス。眠れない夜に、すっと光が差し込んでくるような香り。セルジュ・ルタンス セクションドール ヴェユールドゥニュイ〈パルファム〉50ml 5万5000円/ザ・ギンザ町田さんからの最後の提案は、「選んだ香りを肌につけて、感じたことを言葉にしてみる」こと。町田さんがルタンス氏との対話の中で繰り返してきた作業。残された言葉が、未来の自分を豊かにするのだといいます。
選んだ香りを表現した言葉に対し「0か100か、極端になりがちで、相反するものを持つ自分の本質そのもの。でもそれも愛おしいんです」と安藤さん。「選んだ香りを通じて、自分の本質と向き合うことができました」──安藤さん「言葉にしたら、なぜこの香りを選んだのかとても納得がいきました」と話す安藤さんの言葉は、「自分の本質が出ていて腑に落ちる」ような内容に。
「これまで作られた香りは苦手だったけれど、五感に届けることを目的としたものは、調香された香りも天然の香りも本質は変わらない。人として生きていくために、香りを嗅ぐという行為の大切さ、力強さをあらためて感じることができた3日間でした」
表示価格はすべて税込みです。
撮影/浅井佳代子 ヘア/西村浩一〈VOW-VOW〉 メイク/村松朋広〈関川事務所〉 スタイリング/遠藤彩香 取材・文/巽 香
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。