〔解説してくださるかた〕村上 司(むらかみ・つかさ)先生野口病院 院長。1982年愛媛大学医学部卒業後、同大学第3内科に入局。野口病院医局員、愛媛大学医学部附属病院第3内科助手等を経て、1999年に野口病院内科部長、2017年から現職。日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医・指導医、日本甲状腺学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。日本内分泌学会代議員、日本甲状腺学会監事などの要職を務める。全身の代謝が落ちて、多様な症状があらわれる
周囲の人よりも寒がり、いつも眠気がある、皮膚が乾燥する、体重が増える、便秘がち、顔がむくんでいる、体がだるい、集中力がない、物忘れがひどくなった、脱毛しやすい、脈が遅い......。こんな症状が気になるなら、甲状腺機能低下症かもしれません。
甲状腺は首のつけ根、気管の前面にある内分泌腺で、甲状腺ホルモンを分泌します。
甲状腺ホルモンは新陳代謝に不可欠で、成長にも関連するホルモン。甲状腺機能低下症は、何らかの理由で甲状腺から甲状腺ホルモンが分泌されにくくなり、それによって全身に影響が出る病気です。
喉仏の下に位置する甲状腺
甲状腺は首のつけ根の喉頭と気管の境目あたりにあり、気管の前面を取り巻いている。蝶のような形が特徴。新陳代謝や成長を促す甲状腺ホルモンを分泌する、体内で最も大きな内分泌腺。腫れて大きくなると体表面から触りやすくなるため、甲状腺の病気が疑われる場合には触診で大きさや硬さ、押さえたときの痛みの有無などをみる。
甲状腺機能低下症の有病率は統計によって異なりますが、女性に多く、年齢が上がるにつれて頻度が高くなることが知られています。
内分泌の病気の専門病院である野口病院(大分県別府市)院長で、日本内分泌学会専門医・指導医(内科)、日本甲状腺学会専門医である村上 司先生は、「この症状を持っていても診断されていない人が多く、潜在性の甲状腺機能低下症患者さんは、診断されている人の10倍くらいはいると推定されています」と話します。
甲状腺機能低下症は意外に身近な病気といえそうです。