漢方の知恵と養生ですこやかに 第1回(02) 普段の生活こそが治療の場──。根本幸夫先生の基本的な考え方です。季節の「気」が体の「気」に影響するという中国医学の理論をベースに養生法や症状改善のセルフケアについて、1年間教えていただきます。漢方の知恵を身につけて、今月もすこやかに過ごしましょう。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学特任教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生
●前回の記事
この時季忍び寄る”寒邪と乾邪”とは? かぜ、インフルエンザに注意>>首と背中を温めて、寒さを断つ。口と鼻を潤して、喉を守る
食事療法の基本は「四気論」。「温」の食材と調理法で
中国の古代王朝・周の制度を記した書『周礼(しゅらい)』の中で、食医は内科医や外科医よりも上位にランクづけされています。皇帝が病気にならないよう食事を管理・指導して長生きさせるのが食医。健康のために毎日の食事がいかに重視されていたかがわかります。
漢方の食事療法の基本的理論の一つが「四気論」です。四気とは「寒・涼(微寒)・温・熱」で、食物が体内に入ったときに働く作用を示します。1月に積極的に摂りたいのは「温」の食べ物ですが、四気は調理法や食材の組み合わせ、食べる人の体質によって変化するのが特徴です。
たとえば生の大根は「寒」で、しょうがを加えて煮ると「温」に。しょうがは体を温め、発汗させる作用がありますが、目が充血している人や痔のある人が摂りすぎると症状を悪化させることがあり注意が必要です。
これらは2000年に及ぶ長い歴史と経験則が証明する薬効で、現代栄養学が基本とする栄養成分やカロリーでは説明しきれない食べ物の「気」の作用だといえます。
小寒から節分(2月3日頃)の間に産み落とされる寒卵(かんたまご)や厳冬期にとれる寒しじみには栄養分・滋養分が凝縮され、免疫力の落ちる冬には大変貴重な食材です。季節特有の食べ物を摂ることも大事な食養生なのです。
カイロやマスクを上手に使い、“温めて、潤す”がセルフケアの基本
底冷えのする日は、首の後ろや肩甲骨の間に使い捨てカイロを貼っておくと寒さの侵入路を断つことができます。
喉粘膜を守るコツは、口や鼻を潤すこと。就寝時は首にタオルを巻き、中央部分を湿らせたマスクで口だけでも覆うと口呼吸による喉の乾燥が防げます。
また、寝具が長時間、過度に暖かい状態だと体から水分が蒸発し続け、特に喉が乾燥しやすくなります。電気毛布を使う場合はあらかじめ温めておき、布団に入ったらスイッチを切るようにしましょう。