漢方の知恵と養生ですこやかに 第2回(01) 立春を迎えても、決まり文句は「暦の上では春ですが……」。唱歌「早春賦」で「春は名のみ(春とは名ばかりの)風の寒さや」と歌われているように、体感的には最も寒く冷えの強い時期です。冬特有の気がかりな症状を漢方の知恵で和らげながら、春を待ちましょう。
前回の記事はこちら>> 尿が近くなる、神経痛、下腹部痛、しもやけ……
春とは名ばかり、まだ風は寒く。冷えがもたらす“冬の気がかり”
〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学特任教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生1947年生まれ。69年東京理科大学薬学部と東洋鍼灸専門学校を同時に卒業後、さらに鍼灸と中国医学を学ぶ。「普段の生活こそが治療の場」をモットーに、漢方平和堂薬局(東京都大田区)では多くの人々の健康相談にのり、養生法をベースに漢方薬処方を行っている。横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター長ほか役職多数、著書多数。寒さの中にも春の兆し。エネルギーを蓄える閉蔵のとき
春になる直前のこの時期は、体感的に最も寒く、体が冷える時期です。とはいえ、真冬の暗くて重い空気とは明らかに様子は異なり、かすかにきらめきはじめた光にふと春の兆しも感じ取れる頃ではないでしょうか。
中国医学の古典『素問(そもん)』に、冬は「閉蔵(へいぞう)」のときと記されています。種は土の中で芽吹きを待ち、枝先の堅い蕾は先をわずかに赤らめて「花開くのはもう少し先」とじっと我慢をしながら暖かくなるのを待っています。
人も同じ。活動前の力を溜め込む時期ですが、寒さゆえに家に閉じこもりがちになり、気持ちの落ち込みやすい季節でもあります。