患者の話をよく聞き、漢方を駆使。心と体の両面から治療〔女性外来・性差医療の取り組み〕

「今の私」と「未来の私」の健康のために、性差医療の専門外来のサポートを
女性外来を設置する医療機関は全国に約300。その規模により診療スタイルはさまざまです。このうち定評のある女性外来を取り上げ、特徴や診療内容について詳しくご紹介します。

●前回の記事
【静風荘病院】女性のための総合診療科を掲げ、行き場に悩む人の相談と治療にあたる

福島県立医科大学附属病院（性差医療センター）

性差医療センター教授
小宮ひろみ（こみや・ひろみ）先生
1986年山形大学医学部卒業。2004年開設の女性専門外来（20008年性差医療センターとなる）を率い、2017年より現職。専門は生殖内分泌、性差医療、漢方医療、女性医学。

話をよく聞く。漢方を駆使する。二つの強みで心と体の両面から治療

2008年に女性専門外来から機能強化して再スタートした性差医療センター。婦人科医の小宮ひろみ先生を中心に婦人科、心身医療科、内科、外科、歯科口腔外科の医師が携わり、診察から治療まで対応するワンストップの体制をとっています。



予約後に郵送される問診票にあらかじめ記入して持参する。カウンセリングではこの内容をもとに先生が患者さんの話に耳を傾ける。



柔らかな色味で、リラックスして話しやすい雰囲気を心がけた診察室。

女性専門外来の存在意義はメンタルを考慮した診療

特徴は、最初に30分ほど時間をかけてカウンセリングを行うこと。その後、各専門医が連携して検査・治療にあたります。

女性専門外来の受診者はメンタルに不安を抱えている人が多いとの研究結果から、小宮先生はジェンダーと心を考慮した医療の提供に女性専門外来の存在意義があるのではないかと考えたのです。診察室では患者さんの語りに耳を傾ける傾聴を心がけ、症状につながる問題を探します。

「家庭や仕事のことを語りながら頭が整理されて、患者さんご自身で原因に気づくこともよくあり、その後の治療経過によい影響を及ぼしています」。



脈診、腹診、舌診など漢方的な診断方法は欠かせない。

もう一つの特徴が漢方です。心身一如（しんしんいちにょ＝心と体は一体である）をベースとする漢方は、全身に及ぶ更年期症状や自律神経の乱れによるメンタルの不調などに効果的な女性向きの医療です。患者さんの希望を尊重し、漢方薬やホルモン補充療法を駆使し経過をみていきます。

「ここでなければ治らない患者さんがおられることは確かです。今後も共感してくれる仲間を増やし、センターの充実を目指していきたいと考えます」