産婦人科医・高尾美穂先生に教わる
不調とのつきあい方
高尾美穂先生産婦人科医・イーク表参道副院長。東京慈恵会医科大学大学院修了。同大学附属病院産婦人科を経て2013年より現職。医療・ヨガ・スポーツを通じて女性の健康とよりよい生き方の啓発活動に取り組む。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」を毎日更新中。「小さな違和感は“体の曲がり角”のサイン。見逃さず、無理をせず、自分中心の生活にシフトしましょう」── 高尾美穂先生
今までと違う不調を感じたら、「更年期かも?」と考えてみる
50歳前後は女性の体が大きく変わるとき。今までと違う違和感を感じたら更年期症状かもしれないと考え、体の中で起きている変化を知ることが必要です。
40代から卵巣機能は低下し、女性ホルモン・エストロゲンの分泌量も急激に下がってきます。自律神経のバランスを整え、血管や骨を守ってくれるエストロゲンの恩恵が失われる体の“曲がり角”を、生活を見直す好機と捉えましょう。
症状の程度は人それぞれですが、PMS(月経前症候群)や産後うつを経験した人、自己犠牲型といえるような性格の人は更年期症状が重く出やすいこともわかっています。
自分のリスクを知ってある程度の心構えを持つことも大事です。
体の症状だけではない。日本人女性に多いメンタルの不調
更年期にはさまざまな不調が全身に表れますが、実は日本人女性にはメンタルに症状が出やすい傾向があるとされています。
ホルモンの影響に睡眠不足やストレスも加わって、うつ状態になったり気分が落ち込んだり、イライラして怒りっぽくなったり、物忘れといった症状が起こりやすいのです。
気をつけたいのは、更年期の陰に隠れたほかの病気を見逃さないこと。
たとえばバセドウ病(甲状腺機能亢進症)に見られる発汗や動悸は更年期症状と似ていますし、心の専門家が対応すべきメンタルの疾患もあります。
症状が重いときは医療機関を受診し、少なくとも年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。
不調レベルがわかる! 更年期指数チェックリスト
【強度の目安】強=日常生活に差し障りがあるほどつらい 中=我慢できなくはないけれど、なんとかしたいレベル 弱=症状はあるけれど、まだ我慢できる程度 無=ほとんど感じたことがない〔0〜25点〕
上手に更年期を過ごしています
〔26〜50点〕
食生活や適度な運動を意識して、無理のない生活を
〔51〜65点〕
医師による生活指導、カウンセリング、薬物療法が必要
〔66〜80点〕
半年以上の長期的な治療計画が必要な段階です
〔81〜100点〕
精密検査で方針を決め、長期的な治療を行う必要あり
高尾美穂著『いちばん親切な更年期の教科書』より作成まずは、睡眠時間の確保。そして50代のうちに運動習慣を
50代女性には、時間の使い方を自分中心にシフトすることをおすすめします。ほかの誰かではなく自分のための時間を作り、睡眠時間を確保してほしいのです。
睡眠不足が続くと体の疲れが取れないだけでなく、イライラしたり悲観的に考えたりとメンタルにも影響が出ます。
そして運動の時間を持ちましょう。更年期のうつ症状は運動習慣のある人に起こりにくく、運動によって改善することもわかっています。もちろん食事の時間もおろそかにしないように。
“休む・動く・食べる”の基本を整えることが自分で自分をいたわる本来の“セルフケア”です。その土台の上に、自分に合う方法を取り入れてみましょう。
〔特集〕ウェルビーイングな人生の知恵袋 病気未満の不調をセルフケアで快適に(全17回)
撮影/鍋島徳恭(人物) 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。