予防だけでなく、着実に“結果”を出す時代へ「本気の頭皮・毛髪ケア最前線」 第5回(全8回) 女性の薄毛や抜け毛の多くは更年期前後から始まり、加齢とともに増えてくる、誰にでも起こり得る生理的現象の一つです。「年齢のせい」とあきらめている人も少なくありませんが、女性の薄毛や抜け毛は治療やホームケアで改善できる時代になりました。一方で、せっかく治療を受けても思うような効果を得られない人もいます。そこで、最先端治療からホームケアで活躍する機器、ヘアケア製品まであらゆる方面から衰えていく毛髪を健やかに保つ情報をお届けします。
前回の記事はこちら>> 「メカノバイオロジー」から生まれた未来のテクノロジー
超音波による振動圧刺激技術で治療を強力にサポート
星さんとクリニックに納品する前の試作機。出力する超音波は1平方センチメートルあたり約1グラムで、頭皮への刺激を感じるか感じないか程度。非接触で衛生的なのも特徴。ピクシーダストテクノロジーズ取締役CRO
星 貴之さん超音波の研究に従事しながら、2015年に筑波大学准教授の落合陽一さんらと同社設立。2018年取締役CRO最高研究責任者就任。頭皮に照射した超音波が発毛剤との相乗効果を発揮
今、注目されているメカノバイオロジー。重力やそこから発生する振動などの機械的な刺激が生物にどのような影響を与えているかを研究する学問です。
育毛分野でもメカノバイオロジーの応用が始まっています。
2021年、落合陽一さんが率いる企業、ピクシーダストテクノロジーズが開発した、超音波が発する微力な力を使って非接触で頭皮を細かく振動させる技術が発毛剤ミノキシジルの効果を上げることが明らかになりました。
同社最高研究責任者の星 貴之さんは「日本医科大学形成外科と傷の治療に関する共同研究を以前行った際に、超音波を当てるとマウスの傷が早く治るとともに、傷の周りで発毛が促進されていることがわかりました。それが人の育毛の研究開発に取り組んだきっかけです」と話します。
そして、頭髪用に新しい超音波発信器を開発し、ミノキシジル外用薬の発売元であるアンファーや日本医科大学とAGA患者の特定臨床研究を実施しました。
研究の被験者は男性のみ19名。毎日1回5パーセント濃度のミノキシジル外用薬を塗布した部位と、毎日の塗布にプラスし、週1回20分間の超音波照射をした部位を6か月間比較。その結果、前者と比べ照射を加えた部位は毛密度が16.6パーセント増加していました。
「頭部に雨粒が降ってくるようなかすかながらリズミカルな振動です。たまに温かさを感じるかたはいますが、副作用は今のところ確認されていません。超音波もミノキシジルも髪のもととなる毛母細胞を刺激することで発毛が促進されると推測していますが、それを確認する研究を進めているところです」。
現在、超音波とミノキシジルを組み合わせるこの治療は発毛治療を専門とするDクリニックで男性を対象にスタートしています。また、サイズを縮小した家庭用の頭皮ケアデバイスを年内に発売する見通し。
「女性に対しても、また超音波単独でも同様の可能性を感じており、今後その成果をお伝えしていければと考えています」。
Dクリニック新宿で男性向けの治療が始まりました
共同研究による成果を発表したアンファーと提携する「Dクリニック新宿」で、上記技術を用いた治療が受けられます。詳細はお問い合わせください。現在、女性専用クリニックである「クレアージュ東京 エイジングケアクリニック」でも使用試験を開始予定。導入が待たれます。
Information
Dクリニック新宿
東京都新宿区新宿3-17-10 HULIC&New SHINJUKU 8階
〔特集〕予防だけでなく、着実に“結果”を出す時代へ 「本気の頭皮・毛髪ケア最前線」(全8回)
表示価格はすべて税込みです。
撮影/三田村 優(取材) 取材・文/小島あゆみ
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。