親と自分のために──知っておきたい認知症介護の話 第5回 認知症に向き合うには事前の備えが大切です。介護する側とされる側、お互いが幸せに過ごすために、さまざまな分野の専門家から具体的なアドバイスを伺います。
前回の記事はこちら>> 〔今月の専門家〕介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子(おおた・さえこ)さんNPO法人「パオッコ~離れて暮らす親のケアを考える会」理事長。1993年頃より老親介護の現場取材を始める。96年、遠距離介護の情報交換の場を立ち上げ、2005年に法人化。著書に『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版社)など多数。介護を行うのは実子が原則。きょうだいでの役割分担は負担が集中しないよう早めの相談を
「ひと昔前なら親の介護は長男の嫁の務めと考える人が多かったですが、男女を問わず仕事を持ち、きょうだいの数が減ってくる中、古い価値観は失われつつあります。また、それぞれの親が同時に倒れるケースも珍しくないため“自分の親は自分で介護”という考え方が主流になってきました」と介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは介護者に対する意識の変化について説明します。
親を介護する際には家族で抱え込まず、介護サービスを上手に利用することが肝心です。認知症を患っていればなおさらでしょう。しかし、親にとって自分の老いを受け入れなければならないデリケートな問題なので、嫁から介護保険の申請や介護サービスの利用を提案されても“余計なお世話”ととられかねないといいます。
また、費用も絡んでくるので、親の経済状況を確認する必要があり、この行為がきょうだい間のトラブルを招くおそれも否めません。「こうした理由などから実子が介護を行うのが原則です」。
とはいえ、介護に伴う重大な決断(離職して介護に専念する、親を呼び寄せて同居するなど)は配偶者に事前に必ず相談し、丁寧な対話を重ねることが欠かせません。
「夫婦なのだから、そのときにいえばわかってくれるだろうと考える人が少なからずいますが、なし崩し的に実行に移したことで夫婦関係がうまくいかなくなり、離婚に至ったケースもあります」と太田さんは注意を促します。