漢方の知恵と養生ですこやかに 第6回(02) すがすがしい新緑の季節はあっという間に過ぎ、今年も梅雨の到来です。湿気で調子も崩れがちですが、上手に汗をかけば体も心も意外なほどすっきり。潤いを得て輝く樹木や色鮮やかな紫陽花など、季節を楽しむ余裕も出てくることでしょう。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学客員教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生
●前回の記事
だるい、おなかが張る、うつっぽい…。梅雨どきの「湿邪(しつじゃ)」は心身の大敵>>お灸や軽い運動で汗を出し、利尿作用のあるお茶で水分を体外へ
患部に直接お灸をすえて、だるさや痛みを取り除く
湿邪による倦怠感や腰痛、肩こり、膝の痛みなどを取るにはお灸がとても効果的です。
艾(もぐさ)を一つまみ取り、親指の頭くらいの大きさの円錐状に軽くまとめます。これをだるさやこりや痛みを感じる場所(阿是穴=あぜけつといいます)に直接のせ、線香で火を点け、熱さを感じたらさっと取り除きます。患部が軽く汗をかいていたら、老廃物が除かれて気が流れた証拠。何ともいえない爽快感が得られるはずです。
これは「知熱=ちねつ灸」という方法で、正規のツボの場所を探す必要がないので家庭で簡単に行うことができます。市販の簡易な間接灸(艾を直接肌にのせない方法)を用いてもよいでしょう。
お灸をすえた後約2時間は入浴を控えます。湿気を取る作用と温める作用が混ざって邪魔し合い、すっきりした心地よい効果を得ることができません。
また乾布摩擦でも皮下の水分を出すことができます。梅雨の貴重な晴れ間には、戸外で軽く運動を。少し速足で歩くなどして汗をかいたら、シャワーを浴びて、すぐに着替えましょう。いずれにしても出た汗はすぐに吸い取ることが大事です。
パジャマは「長袖長ズボン」で、朝の目覚めをすっきりと
この時期に気をつけたいのが服装です。できるだけ肌を覆う衣類を着るよう心がけましょう。せっかく外に出た汗も、吸い取る布がないと毛穴に留まり、体表部の気の流れを妨げ、重だるさや疲労感の要因となります。
特に就寝時、パジャマ代わりにTシャツと短パンで寝て夜中に汗をかいてしまうと、翌朝は体が重く、ぐったり疲れ、何ともいえない不快感で目覚めることに――。吸湿性にすぐれた生地の長袖長ズボンに替えるだけで朝の目覚めはかなり快適になります。
漢方薬は体質や症状の出方で処方が異なります。関節・筋肉痛、むくみ、腰痛、神経痛には麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)。寝汗、下半身の汗やだるさには防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)。また、胃痛、おなかの張り、便が出にくい、ガスが出るなどおなかの症状には平胃散(へいいさん)が代表的処方です。